【転載】国立天文台・天文ニュース(359)

テスト望遠鏡ネクサス


 次世代宇宙望遠鏡(Next Generation Space Telescope;NGST)のテスト機として、NASAは、口径2.8メートルの望遠鏡ネクサス(Nexus)を打ち上げることにしました。

 天文ニュース(352)でお知らせしましたように、NASAは口径8メートルのNGSTを2009年に打ち上げる計画です。8メートルの反射鏡となると、大きく、重過ぎて、一体の鏡として打ち上げることができません。そこで、分割したいくつかの部材として打ち上げ、宇宙空間で組み立てる予定です。さらに、太陽の直射による熱変形をを避けるため、大きな日よけをかけることになっています。NGSTは地球から約150万キロメートル離れた重力の釣り合い点(ラグランジュ点)に置くことが予定されていますから、遠すぎて、ハッブル宇宙望遠鏡のようにスペースシャトルを利用しての修理は不可能です。したがって、最初の組み立ては、直接の人手を介することなく、絶対確実におこなう必要があります。

 この作業を確実に実行するため、NGSTの打ち上げに先立って、NASAは3分の1の大きさの模型ネクサスを打ち上げ、望遠鏡の組み立て、展開が順調に進むかどうかのテストをすることに決めました。これは当初の計画にはなかったものです。換言すれば、テストなしにNGSTを建設することは、あまりにも危険であると判断されたからです。

 ネクサスは3年がかり、2億ドルの予算で作るもので、六角形の部材3個を組み立てて反射鏡を作る、およそ口径2.8メートルの望遠鏡です。口径はハッブル宇宙望遠鏡よりいくらか大きいものですが、円形ではありませんから、光を集める能力は劣ります。ネクサス自体立派な望遠鏡ですが、あくまでNGST打ち上げを順調におこなうための技術テストの性格をもつ装置です。反射鏡の材料や設計についての研究は予定より遅れがちということですが、日よけの方は順調で、2001年10月には、スペースシャトルの宇宙飛行士が展開と安定性のテストをする予定になっています。

 反射鏡の軽量化、空間で精密に組み立てる方法、絶対温度50度の低温下で確実に動作する機械系、宇宙空間で広げても望遠鏡の照準を狂わせることのない日よけなど、NGSTが成功するために越えければならない技術的問題はまだたくさんあります。まだ最終設計が完了しているのではありませんが、ネクサスは、これら諸問題を解決するための先導的役割を果たす望遠鏡です。

参照

2000年6月29日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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