【転載】国立天文台・天文ニュース(353)
ほとんどの恒星は連星、三重連星などの多重星系として生まれる。4月にドイツ、ポツダムで開催された国際天文学連合のシンポジウムで、このような研究および観測結果が発表されています。
恒星がどのように誕生するか、この問題は、これまで主として単独星を中心に研究されてきました。しかし、恒星のおそらく半分以上は連星、三重連星などの星のグループを作っています。観測技術が向上するにつれて、これまで単独星と思われていた星が連星であることがわかり、連星の割合はだんだん増えていく状態です。ジェネバ天文台のメイヤー(Mayer; M)が、太陽近傍で、質量が太陽以下、太陽の一割程度までの星を調べたところ、その半分には伴星がありました。質量の小さい褐色わい星でさえしばしば伴星をもつています。そして、古い星より、若い星の方が連星である割合が大きいのです。ここから、始め連星であったものが、どこかで単独星に分かれるというシナリオが見えてきます。
メリーランド大学のマンデイ(Mundy, L.)によりますと、星形成のごく初期の非常に若い原始星は、連星、三重あるいは四重連星が一般的で、星形成領域に単独星はめったにないということです。しかし、このような三重以上の連星は一般に力学的に不安定で、進化の過程で単独星を放出し、安定な形に落ち着きます。二つの星の連星になれば必ず安定します。一方放出された星は、その後単独星として進化を続けます。したがって、若い星の方が連星である可能性が大きいのです。
このような形で理論家たちが提案したモデル、つまり多重星系で誕生した星がしだいに分裂するモデルは、この集会で観測家たちに強く支持されました。たとえば「おうし座T型星(T.Tauri)」は進化の初期のごく若い星と考えられていますが、観測によると、連星である割合がかなり高く、これまで単独星と思われていた「おうし座T星」自体も三重連星のひとつであることがわかりました。しだいに分裂していく系を考えると、連星系の周りに円板が形成されることも、たやすく説明ができます。コロラド大学のレイパース(Reipurth, B.)は、若い星に伴う大規模なガスの流出や、光学ジェット流なども、連星、多重連星であることがその原因であるという見方をしています。
このように、その他さまざまな内容の発表を加えて、ポツダムの集会は、理論家、観測家がともに満足する、連星系形成の有力な機構をまとめあげた形で終わりました。今後、初期の恒星進化を考えるとき、多重星として生まれる立場を無視することはできません。
参照
2000年6月1日 国立天文台・広報普及室