【転載】国立天文台・天文ニュース(349)

小惑星(216)クレオパトラの形


レーダー観測によって、小惑星(216)クレオパトラの形が求められました。この報告によりますと、三軸方向の長さがそれぞれ217キロメートル、94キロメートル、81キロメートルの長く伸びた形で、中央部がくびれ、両端にこぶのある、鉄亜鈴のような、あるいは犬の骨のような形だということです。

 カリフォルニア工科大学、ジェット推進研究所のオストロ(Ostro,S.J.)たちは、1999年11月に、プエルト・リコ、アレシボ天文台のレーダー装置のSバンド(2380MHz、波長12.6センチ)を使って、M型小惑星クレオパトラの観測をおこないました。M型というのは、反射スペクトルから、鉄、ニッケルの合金が存在すると考えられる小惑星で、メインベルトには42個のM型小惑星が確認されています。オストロたちの観測法は、地上からレーダーの電波を送り、目標からの反射波を捕らえて解析をするもので、目標のおよその形を知ることができるだけでなく、その表面の物質の性質についても情報をもたらすものです。およその形といっても、小惑星表面のクレーターが見えるくらいの精度はあります。

 観測の結果、クレオパトラの表面は、衝突などで生じた細かい表土でほとんど完全に覆われていると推定されています。あるいは、完全に二つに分かれた形の間をそのような衝突生成物が繋いでいるのかもしれません。

 ところで、昨年12月、天文ニュース(310)では、ヨーロッパ南天天文台の観測による光学像から、クレオパトラが連星であることをお伝えしました。それに対し、今回のレーダー観測ではひとつにまとまった細長い形であることを報告していますから、相互に矛盾した結論です。どちらが正しいのでしょうか。

 ヨーロッパ南天天文台は、3.6メートル望遠鏡で分離できるぎりぎり限界の観測と伝えています。一方、レーダー観測は、、受信した反射波の強度から計算で像を構成したもので、光学観測に比べて分解能が悪いと考えられます。より詳しい状況がわからない限り、どちらが本当であるか、現在は判定することができません。いずれにせよ、全体がかなり伸びた形であることは確かで、その中間がつながっているのか、切れているのかは、今後の観測を待たなければならないでしょう。

参照

2000年5月18日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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