【転載】国立天文台・天文ニュース(341)

うみへび座TWアソシエーション


 いま、「うみへび座TWアソシエーション」に人々の興味が集まっています。それは、これらの星の周りに、まさに惑星系が生まれつつあると推測されるからです。

 「うみへび座TW星」は「うみへび座」の南の端にある11等星で、低質量の「おうし座T型星」です。同じ分子雲から生まれた10個足らずの星と「うみへび座TWアソシエーション」を形成しています。アソシエーションというのは星のグループを意味する呼び名ですが、たとえば散開星団に比べて、相互の星の結びつきがずっと小さいものをいいます。このアソシエーションの平均距離は約150光年で、太陽にもっとも近い星形成領域です。ここに含まれる星は、天球状で20度、視線方向で60光年の範囲に散らばっています。

 「うみへび座TWアソシエーション」に含まれる星はほとんどが低質量星ですが、ひとつだけ、太陽の2倍の質量をもつ星、HR4796Aがあります。その周りには、中央部が空洞の降着円盤がケックII望遠鏡などによって直接に撮像されています。間もなく惑星が誕生する状況かもしれません。もし、この恒星から数天文単位の距離に木星の数倍程度の質量をもつ惑星が生まれたなら、地上の大望遠鏡で検出できる可能性があります。このグループ内には、すでに1個の褐色わい星が発見され、さらに質量の小さい天体の捜索もおこなわれているのです。

 「うみへび座TW星」の年齢はおよそ1000万年と見積もられ、通常の星形成領域にある「おうし座T型星」の100万年よりも古く、これが恒星周りの円盤進化の条件を決めています。HR4796A以外にも、このアソシエーションの星々のまわりには、古典的「おうし座T型星」降着円盤をもつもの、惑星状の破片をもつものなどさまざまな円盤が観測され、ほとんど円盤がないものもあります。これは、この年齢の星の円盤が急速に進化する過程にあるためと思われます。

 一方では、X線を放射するこれらの星の特徴を利用して、ROSAT衛星を使い、これに似たアソシエーションの探索をおこなっています。その結果、200光年の距離にあるMBM12など、類似のアソシエーションがいくつか発見されました。現在はこれら近距離の若い星の研究を急速に進めている段階で、アリゾナ、ハワイ、チリ、オーストラリアなどの望遠鏡が,光学、赤外、電波などのさまざまの波長域でこれらの天体に向けられています。近い将来、「惑星を直接に検出した」などのニュースがもたらされるかもしれません。

参照

2000年4月20日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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