【転載】国立天文台・天文ニュース(337)

土星より小さい系外惑星


 ハワイにある口径10メートルのケック望遠鏡を使って系外惑星の探索を続けているカリフォルニア大学のマーシイ(Marcy, G.)たちは、今回新たに、土星よりも質量の小さい2個の系外惑星を発見したと発表しました。その内容は次の通りです。

 そのひとつは、地球から109光年の距離にある「いっかくじゅう座」の恒星HD46375の惑星で、土星の80パーセントの質量をもつものです。恒星から0.04天文単位の距離のところを3日周期で公転しています。恒星に非常に近いので、その表面温度は1000度を超えると推定されますから、どんな形にしても、そこに生命が存在する可能性はないでしょう。

 もうひとつは、地球から117光年離れた「くじら座79番星」を回る惑星で、土星の70パーセントの質量をもつと思われます。恒星から0.35天文単位のところを75日周期で公転しています。表面温度は800度以上と思われますから、これにも生命を期待することはできないでしょう。

 これらの惑星は、おそらく、恒星から遠く離れた場所で冷たいガスを集積して誕生したガス惑星と推測されます。何かのメカニズムによってあとから内側に移動し、現在の軌道に落ち着いたものでしょう。このような内側への移動は、かなり一般的に起こるものかもしれません。

 系外惑星は、ほとんどが、惑星の引力によって生ずる、中心にある恒星の視線速度の周期的変化を検出して発見されています。これは、恒星に近く、質量が大きい惑星を発見しやすい方法です。それでも、検出技術が向上したことで、今回のように、土星よりも質量の小さい惑星を発見することが可能になったのです。これまでに発見されていた系外惑星は約30個で、それらはすべて木星より質量が大きいものでした。マーシイらのグループはそのうちの21個を発見しています。土星の質量は木星の3分の1しかありませんから、今回の発見は、小さい惑星の発見へ向けての大きな前進です。しかし、今回発見の惑星の質量はまだ地球の70倍もあります。できることなら、岩石からなる地球程度の大きさの惑星を発見したいところですが、それにはまだ検出能力が不足と思われます。

 マーシイたちは、地球から300光年以内の距離にある1100個の恒星のすべてに対して、系外惑星の探査をする計画を進めていますから、今後、さらに質量の小さい惑星の発見が期待されます。

参照

2000年4月6日 国立天文台・広報普及室


去る、3月25日(土)、すばる望遠鏡によるM82銀河の写真が公開されました。詳しくは、国立天文台・ハワイ観測所のページ(http://www.naoj.org/j_index.html)をご覧下さい。


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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