【転載】国立天文台・天文ニュース(330)
きたる5月に惑星が直列するということで、国立天文台にもよく問い合わせがあります。今回はこの惑星直列についてお知らせします。
天文学的に惑星直列という言葉があるわけではありません。一般的には、いくつもの惑星が見かけ上ほぼ同一方向に位置することを、惑星直列と呼んでいるようです。このときはそれら惑星の引力や潮汐力が重なって地球に作用するので、地殻にひずみが生じ、地震や火山噴火などの災害が頻発するという話もあります。
まず知っていただきたいのは、たくさんの惑星が完全に同一方向にくることは、過去も将来もあり得ず、直列といってもみかけ上せいぜい数10度の範囲に集まるに過ぎないことです。さらに、そのときの潮汐力などの合計が、地球に災厄を及ぼすレベルには遠く達しないことも忘れてはなりません。「惑星直列によって災害が起きる」という心配はまったく無用のことです。
この5月の惑星直列といわれるものは、太陽および水星、金星、火星、木星、土星の肉眼でみえる5惑星が「おひつじ座」から「おうし座」にかけて集まるものです。よく、5月5日といわれているようですが、実際にこれらがもっとも狭い範囲に集中するのは5月17日19時30分(日本時)頃で、19.4度の幅に集まります。このとき、火星がもっとも西側で、その近くに水星があります。また、金星が最も東にあって、すぐそばに木星、土星があり、3星でまとまっています。太陽はこの二つのグループの中間に位置します。太陽が含まれていますから、残念ながら、これらの惑星の姿を夜空に直接見ることはできません。
惑星直列に関しては、つぎの直列はいつか、どのくらいの周期で起きるのかという質問をしばしば受けます。これは、どのくらいの範囲に集まったときを直列とみなすか、どれだけの惑星を対象に考えるかといつた条件によって異なり、一概に答えることはできません。水、金、火、木、土の5惑星だけを対象に考えると、2年後の2002年5月13日に、「おうし座」から「ふたご座」にかけて、33.3度の範囲に集まることがわかっています。しかし、そのあと当分このように集中することはありません。
惑星直列に決まった周期はありません。それぞれの惑星の会合周期を考え、その最小公倍数をとれば、それが周期になるはずだといわれる方もあります。しかし、上記の5惑星で計算しただけでも、217億年という宇宙年齢よりも大きい値が出てきますから、これは現実的な解答になりません。
2000年3月2日 国立天文台・広報普及室