【転載】国立天文台・天文ニュース(324)
ロシアの宇宙ステーション、ミールを、富山市天文台の方々が、その形がわかる画像で撮影に成功しました。
ミールは、1986年4月に旧ソ連が打ち上げた宇宙ステーションで、観測などのために人間が滞在できる人工衛星です。その後いくつもの部分をドッキングして、6人の宇宙飛行士が滞在できる大きさになりました。貨物船が地球から往復して、滞在者が交替したり、必要な資材を補給したりします。1990年には、日本の秋山豊寛(あきやまとよひろ)さんが滞在、宇宙からのリポートをおこなって話題を呼びました。
このような宇宙ステーションやスペースシャトルなどを形がわかるように撮影するには、目標が近づいたときに、長焦点の光学系を使って、見かけの動きを追尾しながら撮影しなければなりません。見かけの動きが大きいものですから、通常の天体望遠鏡ではこの追尾が困難です。
富山市天文台の口径1メートル、焦点距離8メートルの望遠鏡は、このような動きの早い人工衛星を追尾することが可能なタイプです。同天文台の布村克志(ぬのむらかつし)、中村哲也(なかむらてつや)、渡辺誠(わたなべまこと)の三氏は、協力して、1月29日17時45分(日本時)から2分間、この望遠鏡でミールをビデオ画像に収めることに成功しました。その時の仰角は約45度、距離は約450キロメートルでした。はじめは斜め前の姿でしたが、しだいに太陽電池パネルに太陽の光が反射して輝く姿に変わりました。その後さらに向きを変え、横から丁字型に見える形で終わっています。この映像の一部は、テレビでも放映されました。
富山市天文台は、スペースシャトル、イリジウム衛星、ハッブル宇宙望遠鏡などの撮影にも努力されていましたが、これまでは、条件が悪く、あまり見事な画像を得ることができなかったそうです。しかし、今後いつか、スペースシャトルなどのきれいな映像を見せてもらえるかもしれません。努力を期待します。なお、今回のミールの画像は、近々富山市天文台のホームページで公開したいとのことでした。
2000年2月3日 国立天文台・広報普及室