【転載】国立天文台・天文ニュース(322)
互いに衝突している銀河の写真を見ることがあります。銀河の衝突はまれな、例外的現象と思われがちですが、実はそうではなく、銀河の進化には、衝突、合体が必然的な条件と考えられます。1996年にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した深宇宙画像には、現在の宇宙の10パーセント程度の年齢の若い銀河がたくさん写っていますが、現在の銀河と違って、その大部分は小さく、不規則で、形成中との印象を受けるものでした。理論によりますと、初期には銀河系の10万分の1程度の質量をもつ暗黒物質のかたまりがたくさんあり、それらが合体、成長して、しだいに今日の銀河の形になるのだそうです。
銀河の合体は終わったのではなく、今後も続きます。これは、われわれの銀河系も例外ではありません。たとえば、1994年に発見された「いて座」のわい小銀河は、銀河系の1000分の1くらいの質量で銀河系の周りを回っているらしく、すでに外部銀河を何回か通過して、形がすっかり変わっているということです。そして今後10億年程度で銀河系に吸収されると推定されています。
吸収、合体はこれだけではありません。さまざまな観測と理論をもとに、イリオン(Irion, Robert)は、銀河系の今後は、つぎのような経過をたどると予測しています。
まず、数10億年程度の時間で、大、小マゼラン雲を銀河系が吸収する。このとき、ガス雲の衝突で恒星がたくさん誕生し、その後数億年、銀河系は現在の25パーセント以上明るく輝く。
ついで、アンドロメダ銀河と衝突、合体する。現在、毎時50万キロメートルの速度で、銀河系とアンドロメダ銀河は近付いている。いまのところ約250万光年の距離があるが、近付くにしたがって速度が増し、30億年程度で衝突、合体にいたる。アンドロメダ銀河は銀河系の2倍の大きさがあるため、その潮汐力で、衝突までに銀河系はすっかり形が変わる。その後20億から30億年たつと、合体した銀河は、灯火に群がる蛾のように、その内部を恒星がランダムな軌道で走る形になり、渦巻き銀河の構造を失い、楕円銀河のようになる。これが銀河系の最後の姿である。
この予測がどこまで真実であるのか、いまのところ何ともいえません。それでも、銀河系がいつまでも現在の形を保ち続ける保証がないことだけは確かのようです。
参照
2000年1月27日 国立天文台・広報普及室