【転載】国立天文台・天文ニュース(309)
太陽の前面を月が通過して日食を起こすことは、みなさんよくご存じでしょう。太陽の前を通過する天体がもっと小さいときは、太陽面通過とか日面経過といわれます。水星や金星はときどき日面経過をします。去る11月16日に水星の日面経過がありました。ただ、天候が悪かったのため、日本ではその状態を観測することはほとんどできませんでした。
太陽以外の恒星でも、惑星があるなら、同様に恒星面通過をすることもあるでしょう。見かけの大きさが、主星に比べて非常に小さいものでなければ、そのとき、恒星の光は惑星にさえぎられて多少は暗くなるはずです。また、推定した時刻にいつも暗くなるのなら、それは恒星が存在する有力な証拠になるでしょう。
最近、ハワイの口径10メートル、ケック望遠鏡によって、系外惑星をもつらしい6個の恒星が検出されました。テネシー州立大学のヘンリー(Henry, Greg)らは、その中から、「ペガスス座」の7.6等星、HD 209458の観測データを調べ、約3.5日周期でその惑星が恒星面通過をするらしいことに気付きました。つぎに通過が想定されるのは11月8日(世界時)です。ヘンリーは、アリゾナ州、フェアボーン天文台の口径0.8メートル望遠鏡でこの観測をおこなったところ、予定時刻に、恒星の明るさの1.7パーセント(0.017等)の減少が確認されたのです。
しかし、この変化は、恒星面の黒点など、その他の理由によるのかもしれません。しかし、その後3日ほど、恒星の明るさは変化しませんでした。つぎの恒星面通過の11月11日は昼間なので観測できません。さらにつぎの予定日は15日、18日、22日(世界時)です。12日にヘンリーらは、これまでの経過を発表して、他チームに観測の支援を要請しました。
その結果、18日に、カナリヤ諸島天体物理研究所(Instituto de Astrofisica de Canarias)のレボロ(Rebolo, R.)らは、口径1.5メートルのスペイン望遠鏡によって0.023等の減光を観測、また、セント・アンドリュース大学のストリート(Street, R. A.)らは、口径0.9メートルのグレゴリー望遠鏡で0.019等の減光を観測するなど、確認観測がつぎつぎに報告されました。こうして、恒星面通過の減光を観測することから、系外惑星の存在が一層確実なものになったのです。ヘンリーらの計算によると、この惑星の質量は木星の0.63倍、直径は1.6倍で、密度は1立方センチあたりわずかに0.21グラムということです。
参照
1999年11月25日 国立天文台・広報普及室