【転載】国立天文台・天文ニュース(308)

ハッブル宇宙望遠鏡がダウン


 数々の鮮明な宇宙の映像をわれわれに見せ、科学的にもたくさんの貴重なデータを生み出していたハッブル宇宙望遠鏡が、使用不能になりました。

 ハッブル宇宙望遠鏡は、その姿勢を安定させ、望遠鏡を目的の天体に正しく向けるために、ジャイロスコープという一種のコマのような装置を使っています。望遠鏡の姿勢安定のためには少なくとも3台のジャイロスコープが必要ですが、安全のため、ハッブル宇宙望遠鏡は6台を搭載しています。しかし、1990年にハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられて以来その故障が続き、ジャイロスコープはNASAの技術者にとって悩みの種でした。前回の修理の際に4台を新品に交換しましたが、その後も故障が相い次ぎ、この11月13日に搭載している4台目のジャイロスコープがとうとうダメになって、働いているのは2台だけになりました。そして、ハッブル宇宙望遠鏡は観測不能の状態に追い込まれたのです。このため、予定していた木星や土星の観測、連星の褐色わい星の捜索、赤方偏移の大きい銀河の調査などができなくなりました。

 もうハッブル宇宙望遠鏡は使えないのでしょうか。そんなことはありません。この修理のため、きたる12月6日に、スペースシャトル、ディスカバリー号が打ち上げられることになっています。この打ち上げは本来10月に予定されていたのですが、いくつかのトラブルのため、延び延びになったものです。このスペースシャトルがハッブル宇宙望遠鏡に近付き、乗り組み員が宇宙空間に出て、修理をおこないます。ジャイロスコープは、より信頼性の高いものにすべて交換するほか、その他の搭載機器も交換、修理をします。ただし、すべてが順調に進んでも,望遠鏡が以前と同様な正常の状態に戻るには,さらに1ヶ月ぐらい時間が必要だと関係者は述べています。うまくいけば、これで2003年まで観測が続けられる見込みということです。

 しかし、ハッブル宇宙望遠鏡がその後どれだけ使用に耐えられるかはわかりません。科学者たちは、将来これに代わるべき高性能の宇宙望遠鏡を打ち上げる計画を進めているところです。これは次世代宇宙望遠鏡(the Next Generation Space Telescope; NGST)と呼ばれていて、さまざまな立場からの検討が重ねられています。いまのところ,口径8メートル、2007年の打ち上げを目標にしているとのことですが、果たしてどうなるでしょうか。

参照

1999年11月25日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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