【転載】国立天文台・天文ニュース(303)
ガンマ線バーストは、数10ミリ秒から数10分にわたって100万電子ボルトにも達する莫大な量のエネルギーを放出する特異な天体現象です。1967年に初めて発見されて以来謎の現象とされてきました。しかし、イタリア、オランダが共同で打ち上げたガンマ線観測衛星ベッポ・サックスによる精密な位置決定が可能になってから、その残光(afterglow)が観測できるようになり、正体がしだいに明らかになってきました。以下に述べるように、最近は超新星との関連がいわれています。
ガンマ線バーストを説明するひとつの考えに、コラプサー(collapsar)モデルがあります。これは大質量の恒星核が崩壊し、恒星の自転軸に沿って光速に近い速さでジェット流が噴き出して、ガンマ線バーストになるというモデルです。そのあとにはブラックホールが残り、その周りを太陽質量程度の降着円盤が取り巻く形になります。このとき、ジェット流よりゆっくりした(1万km/s程度の)物質の流れも起こるため、膨張する光球から熱放射が生じて、これは一種の超新星として観測されます。つまり、このモデルが正しいなら、ガンマ線バーストの残光の中に、やや遅れて超新星が見えるはずです。
1998年4月25日に発生したガンマ線バーストGRB 980425のごく近くに、バースト直後に超新星SN 1998bwが発見され、ちょっと話題になりました(天文ニュース190)。でも、このときにはあまり重要視されませんでした。しかし、別のガンマ線バーストGRB 980326でも、バーストの数週間後に、通常の残光の減衰状態と比べると60倍も明るい輝きが認められ、これも超新星の寄与ではないかと考えられて、超新星との関連はにわかに重大なものになりました。ガンマ線バーストの残光はべき指数法則にしたがって急激に減衰しますが、そこに超新星の寄与を考えると、現実の減衰が非常にうまく説明できるのです。光学的に初めて同定されたガンマ線バーストであるGRB 970228に対しても、超新星を考えれば、同様に残光の減衰が説明できるといわれています。
こうしたことから、少なくともガンマ線バーストの一部は、大質量恒星核の崩壊によって生ずる可能性が考えられるようになりました。ことによると、すべてのガンマ線バーストがこのメカニズムなのかもしれません。仮定に仮定を重ねる話になりますが、そうだとすると、大質量星や銀河の進化などに対してガンマ線バーストが密接に関係する可能性も無視できなくなります。
参照
1999年11月4日 国立天文台・広報普及室