【転載】国立天文台・天文ニュース(292)
「木星の100倍から20倍程度のごく低質量の天体がいくつも観測されている。」カナリヤ諸島天体物理観測所(the Canaries' Institute of Astrophysics)のザパテロ・オソリオ(Zapatero Osorio,Maria R.)らはこのように報告しています。そのひとつ、S Ori 47 と呼ばれている天体は木星質量の15倍程度で、まさに褐色わい星と惑星との境界の天体です。
彼女らは、1999年11月に、口径2.5メートルのアイザック・ニュートン望遠鏡にCCDを装着して、距離約1100光年の、オリオン座シグマ星近くの若い星団の周辺を観測しました。そこに、明るさが15等から21等のこの種の暗い天体を数10個見出したのです。その後、測光、分光などの追跡観測によって、これらは、せいぜい太陽の1パーセントの質量しかない非常に小さい天体であることが確認されました。上記の S Ori 47 は、その中でもっとも質量の小さいものです。
オリオン座シグマ星周辺の星団は、誕生後数100万年のごく若い星団ですから、これら低質量星もまだ若く、初期の褐色わい星として光を放っていると思われます。しかし、いずれは、光を出さない暗黒天体として銀河系の中に沈み込むことになります。今回の発見は、このような褐色わい星が、銀河系内にまだまだたくさん存在することを思わせます。
これで思い出すのは、太陽系外研究コーポレーション(Extrasolar Research Corporation)のテレビー(Terebey,Susan)らがハッブル宇宙望遠鏡によって、系外惑星TMR-1Cを直接に観測したと昨年5月に発表した(天文ニュース178)ことです。このとき観測したものが真に惑星であるかどうかについて、この発表はその後疑問とされました(天文ニュース192)。しかし、今回観測されたような天体がたくさんあるとすれば、TMR-1Cのように孤立した惑星が存在する可能性をあながち否定することはできません。その場合、初めから孤立して誕生したか、あるいは恒星の周りに生成した惑星が、何かの力によって放出されて浮浪の惑星となったか、どちらの可能性も考えられます。
参照
お知らせ 来週木曜日の9月23日は「秋分の日」の国民の祝日ですから、天文ニュースの発行は休ませていただきます。つぎは9月30日に発行する予定です。
1999年9月16日 国立天文台・広報普及室