【転載】国立天文台・天文ニュース(178)
太陽以外の恒星にも惑星がある。それを知っただけでもなにか胸がわくわくします。今回はそれを上回り、「系外惑星を直接に見た」というニュースがもたらされました。
太陽系以外の惑星は、これまでに8個が知られています(天文ニュース153)。しかし、それらはすべて、惑星の引力によって生じる恒星の振動を検出したというような間接的確認であり、「その惑星が直接に見えた」ものではありませんでした。そして、直接の確認が待たれていました。今回初めて、惑星らしい天体が直接に捕らえられたのです。
この発見は、アメリカ、カリフォルニア州パサデナにある、太陽系外研究コーポレーション(Extrasolar Research Corporation)のテレビー(Terebey,Susan)らによるものです。彼女らは、1997年8月4日に、ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外カメラおよび多天体分光器(Near Infrared Camera and Multi-Object Spectrometer;NICMOS)を使い、1.6,1.9,2.05マイクロメートルの3種の波長で、「おうし座」にある TMR-1(Taurus Molecular Ring,star 1)と呼ばれる連星の観測をしました。そこで、連星から細く長いガスが糸のように伸びて、その先がかすかに光る天体につながっていることに気付いたのです。これが、はじめて直接に見た原始惑星と考えられる天体です。ガスのフィラメントがつながっているので惑星という認識ができましたが、そうでなかったら、背景の恒星と区別できなかったかもしれません。ただし、この天体は連星から約1400天文単位も離れていますから、惑星といっても、太陽系の惑星とはかなり違った状況にあると考えた方がいいでしょう。
主星である連星は、赤経 4時39分15秒、赤緯 +25度53分付近にあり、距離は約450光年。ガス、ダストの多い星形成領域にあるかなり若い恒星と考えられます。また、発見された惑星は TMR-1C と呼ばれます。その絶対等級は太陽の1万分の1程度ということですから、15等ぐらいになります。そして、多少の仮定のもとに、木星の2-3倍の質量と推定されています。この惑星は、主星によって、毎秒10キロメートルくらいの速度で、系外空間へ放出されたように見えますから、主星を公転する形の惑星としては留まれないのかもしれません。いずれにしても、今後の観測によって、存在、運動についてさらに確認することが必要です。その結果によっては、現在の太陽系創成論、惑星形成理論に影響を与えることになるかも知れません。
参照1998年5月28日 国立天文台・広報普及室