【転載】国立天文台・天文ニュース(207)
太陽観測宇宙天文台ソーホー(SOHO)が6月にコントロール不能となり、機能が停止したことは、すでに天文ニュース(188)(194)でお知らせしました。その後さまざまな努力の結果、8月3日に辛うじて一部の通信が回復しました。今回は、その後の状況をお伝えします。
通信回復後、初めに得られたのは温度データで、それはタンクの燃料が凍結していることを示していました。まず必要なことは、電池を充電し、凍っている燃料のヒドラジンを溶かし、その燃料を噴射して、回転を続けているソーホーの回転を止めることでした。
ある程度電池が充電できたところで、ヒーターにスイッチが入れられ、主タンクと姿勢制御ロケットにつながるパイプの中の燃料を溶かすことができました。引き続いて、9月14日に姿勢制御ロケットに点火し、やっとソーホーの回転を停止させることに成功しました。これで太陽電池パネルが太陽方向に向き、十分の電力供給が可能になったのです。
その後、ソーホーを観測できる状態に戻す作業は、少しづつ、慎重に進められています。これまでの調査では、ソーホー本体に本質的な損傷は発見されていませんから、まだかなり時間はかかるにしても、機能回復に望みがもてます。10億ドルの宇宙天文台がまるまる損失することは免れた模様です。
ソーホーの事故は、すでにお知らせしたように、二つのプログラム・エラーと、地上操作員のミスでひき起こされました。事故の最終報告書には、さらにいくつかの間接的原因を挙げられています。たとえば、保守点検やトラブルの処理などで装置が使用できない時間をできるだけ少なくするようにと、係員が大きなプレッシャーの下で作業していたこと、テレメトリー・データのコンピュータ表示がわかりにくいこと(1994年から指摘されていたにもかかわらず、改善されなかった)、2000までと予定されていた観測計画が2003年まで延長されたため、プログラムの書き換えを余儀なくされたことなどです。事故が起こるには、どんな事故にもなにか共通の要因があるような気がします。
参照1998年10月8日 国立天文台・広報普及室