【転載】国立天文台・天文ニュース(204)
アメリカ、アリゾナ州ツーソンのタッカー(Tucker,Roy A.)は、グッドリック・ピゴット天文台(Goodricke-Pigott Observatory)の口径36センチ、シュミット・カセグレン望遠鏡によるCCD撮像で小惑星の位置観測中「うお座」に17等の彗星を発見しました。しかしこの天体は、ローエル天文台の地球接近天体捜索計画(the Lowell Observatory Near-Earth Object Search;LONEOS)によって、またリンカーン研究所のリニア(LINEAR)チームによって8月27日、28日に、普通の小惑星としてすでに観測、報告され、小惑星1998 QP54として登録されていることを小惑星センターのウイリアムズ(Williams,G.V.)が明らかにしました。
その後の観測でコマと尾が認められましたから、この天体が彗星であることに間違いはありません。しかし、初めに小惑星として記録されたため、その記号をそのままとって、彗星としても P/1998 QP54 の認識符号がつけられました。通称としてタッカーの名はつきません。
この彗星は周期約8.7年の短周期彗星です。近日点距離が1.9天文単位もあり、特に明るくなることはなさそうです。国際天文学連合回報などによる軌道要素と予測位置は以下のとおりです。
近日点通過時刻 = 1998 Oct. 6.698 近日点引数 = 30.177 離 心 率 = 0.55537 昇交点黄経 = 342.001 (2000.0) 近日点距離 = 1.88548 AU 軌道傾斜角 = 17.825 長 半 径 = 4.24060 AU 周 期 = 8.73年 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998 時 分 度 分 AU AU 度 等 Sept.29 0 7.41 +18 52.9 0.906 1.887 163.1 16.8 Oct. 4 0 2.45 +19 48.6 0.909 1.886 162.0 16.8 9 23 57.76 +20 37.0 0.917 1.886 159.6 16.9 14 23 53.56 +21 18.3 0.931 1.887 156.2 17.0 19 23 50.03 +21 53.0 0.950 1.889 152.3 17.1 24 23 47.33 +22 22.0 0.973 1.892 148.1 17.2 29 23 45.57 +22 46.6 1.001 1.897 144.0 17.3 Nov. 3 23 44.81 +23 7.9 1.034 1.903 139.8 17.5 8 23 45.06 +23 26.8 1.070 1.909 135.8 17.6参照
お詫びと訂正 : 天文ニュース(201),(202)で字幕つきプラネタリウム投影につきお知らせしました。その際、当方の早とちりから、「全国で初めて」との表現を使いましたが、その後これについてたくさんの情報を寄せていただき、仙台、佐治、大宮その他各地で、視覚、聴覚障害者のために配慮した投影が行われていることがわかりました。お詫びして訂正するとともに、この種の取り組みが一層充実したものになることを願っております。情報をいただいた方々に深く御礼申し上げます。
1998年9月24日 国立天文台・広報普及室