【転載】国立天文台・天文ニュース(154)
国際天文学連合の小天体命名委員会(The IAU Small Bodies Names Committee)は、すでに発表した2個の彗星の通称を、つぎのように変更、命名することを決めました。
P/1997 T3 は発見後15週間も通称がありませんでした。また、一たん命名した通称を変更することも決して好ましいことではありません。しかし、過去に起こったことのない事態が生じたためで、止むを得ないことと説明されています。
この二つの彗星の発見状況はよく似ています。P/1997 L1 はウプサラ大学天文台のラゲルクビスト(Lagerkvist,C.-I.)がトロヤ群小惑星探査の過程で発見しました。しかし発見段階では小惑星と考えられていて、彗星であることに気付いたのはDLR惑星研究所(DLR Institute of planetary Exploration)のカーセンテイ(Carsenty,Uri)らです。また C/1997 L1 は北京天文台の朱進(Zhu,Jin)が小惑星として発見し、彗星であることに気付いたのはドミニオン天文台のバーラム(Balam,D.D.)です。この二つの彗星に限っては、発見者だけでなく、タイムリーに彗星であることを確認した人の名を加えることが適当と判断されたからです。
しかし、このような事態は今後も起こることがあるでしょう。しかし今後は、「すでに発見されている見かけ上小惑星のような天体を、彗星と確認した人がいたとしても、発見時にその天体が小惑星として自然な軌道であるときを別として、その人は彗星の命名に対して何の権利もない」と小天体命名委員会は釘をさしています。
参照1998年1月29日 国立天文台・広報普及室