【転載】国立天文台・天文ニュース(153)

太陽系外惑星存在の問題にひとつの決着


1995年10月、「ペガスス座51番星」に惑星が存在するとメイヤー(Mayer,Michel)、クロッツ(Queloz,Didier)が報告(天文ニュース 3)して以来、太陽系外の惑星の捜索はひとつのブームとなりました。その結果、惑星をもつ恒星がつぎつぎに発見されました(天文ニュース46)。しかし、これらは惑星そのものを直接にとらえたのではなく、たとえばスペクトルから求めた視線速度の変化を基に恒星の周期的振動を検出し、それによって惑星の存在を推定したというような、いわば間接的な発見でした。その上、「ペガスス座51番星」で求められた惑星は、恒星から僅か0.05天文単位のところを木星程度の質量をもって公転しているというもので、それまで考えられていた惑星形成理論からは想像もできないような奇妙な惑星系でした。そのため、惑星が本当に存在するのかと疑問視する向きもありました。特にグレイ(Gray,David)は「ペガスス座51番星」表面の脈動によって見かけ上の視線速度の変化が生じると主張し(天文ニュース88)、惑星の存在に疑問を投げかけ、話題をよびました。

しかし、惑星存在についてのこの論争は、一年を経て、「惑星は存在する」という形で決着したように思われます。グレイの反論は、高分散で観測して、スペクトル線の輪郭に周期的変化を見出したという事実に基づいていました。しかし、その後の確認観測ではその事実ははっきりせず、結局、グレイ自身が以前の主張を撤回したのです。

一方、その後も惑星をもつ恒星がひき続いて発見されていること自体が、惑星存在を証拠立てているように思われます。特に「おおぐま座47番星」では、恒星から2.1天文単位離れたところを、木星の2.5倍程度の質量の惑星がほぼ円軌道で公転しています。太陽系と比べて、これはごくあたりまえの惑星といえましょう。また、「はくちょう座16番星B」の惑星は離心率が0.68で、大きくつぶれた楕円軌道をしています。でも、その視線速度の変化は、力学から計算されるものと非常によく一致しています。これらの事実は、惑星が存在することと矛盾がなく、惑星が存在すると考えることでもっとも合理的に説明できるのです。

これまでに一応確定したと思われる太陽系外惑星のリストを、下記参考文献から、以下に示します。

恒星名距離
(パーセク)
質量xsin i
(木星質量)
長半径
(天文単位)
周期
(日)
離心率
ペガスス座51番星15.40.440.0514.2308 0.01
アンドロメダ座ウプシロン16.50.630.0534.6210.03
かに座番55星ロー113.40.850.1214.656 0.03
かんむり座ロー16.71.10.2339.60.05
はくちょう座16番星B221.741.70802.80.68
おおぐま座47番星14.12.422.081.0930.09
うしかい座タウ153.640.0423.31260.0
おとめ座70番星18.16.840.47116.70.60
(軌道面と視線方向とのなす角がiですが、決定されていません)
参照

1998年1月22日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

[天文ニュース目次] [星の好きな人のための新着情報]