【転載】国立天文台・天文ニュース(148)

超新星 SN 1997ef


11月27日付け天文ニュース(144)で、北海道の佐藤康男(さとうやすお)さんが、超新星らしい天体を発見したことをお伝えしました。この天体は、その後、銀河UCG4107に属することが確認されて、超新星 SN 1997ef の記号が与えられました。これで、今年日本人が発見した超新星は5個になりました。その内訳は、
串田麗樹さん 1個 SN 1997E,
青木昌勝さん 3個 SN 1997X, SN 1997dd, SN 1997dq,
佐藤康男さん 1個 SN 1997ef,

です。

その後の観測によりますと、今回佐藤さんが発見した超新星SN 1997ef は、通常の超新星とは異なるかなり異常な天体と思われます。スペクトルは一見超新星のように見えますが、細かく見ると、これまでに知られているどの超新星の型にも当てはまりません。総体的に、酸素、ネオン、マグネシウムで構成されている星の核が露出した場合のスペクトルのようにも見えるということです。これは、過去に観測されたことのない、核がむき出しになったタイプI-c の超新星なのかもしれません。もちろん、それ以外の説明も可能であり、正しい解釈をするには、さらに観測をしてデータを収集することが必要になります。

なお、今年の超新星の発見数は、この SN 1997ef までで合計136個になりました。これは1年間の発見数としては、昨年の82個を大きく越えた新記録です。このように、最近爆発的に発見数が増えたのは、超新星を系統的に捜索しているチームがいくつかあり、その貢献が大きいためです。その代表的なチームとして、

(1) カリフォルニア大学ローレンス・バークレー研究所のパールマター(Perlmutter,S.)をリーダーとする「超新星宇宙論計画;Supernova Cosmology Project」チーム。
(2) オーストラリアのストロムロ山・サイディングスプリング天文台のシュミット(Schmidt,B.)をリーダーとする「ハイゼッド超新星捜索チーム;High-Z Supernova Search Team」

が挙げられます。これらのチームの超新星捜索法に大きな違いはありません。そのごく概略を述べますと、まず、大望遠鏡を使い、数週間の間隔を置いて天球上の同じ領域の撮像をおこないます。つぎにそれらの像の濃度をコンピュータ上で差し引きます。その間に大きく光度が変化した天体があれば、その点は大きな濃度差になって表われますから、その点にある天体を、それが超新星であるかどうかもう一度詳しく調査するという手順です。こうして、たくさんの超新星が発見されるようになりました。上記のチームの他に、エロス(EROS;Experience de Recherche d'Objets Sombres)チームも、かなり の数の超新星を発見しています。

参照

1997年12月11日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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