今年の7月4日に予定されているアメリカのディープ・インパクト・ミッションに対応して、すばる望遠鏡を含めた日米の地上大望遠鏡群が共同で観測提案を公募することになりました。
ディープ・インパクトとは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が1月に打ち上げた彗星探査機です。半年かけて、周期彗星であるテンペル第一彗星(9P/Tempel 1)に接近し、探査することになっています。
この探査の最大の特徴は、探査機から重さ約370キログラムのインパクターと呼ばれる衝突機を分離し、テンペル第一彗星の核に衝突させようという野心的な探査計画です。この衝突機の突入によって、彗星核には数十メートルほどのクレーターが形成され、同時に衝突発光が起こる可能性が指摘されています。また、内部のフレッシュな氷が露出して、そこから激しく蒸発が起こり、彗星活動が大きく変化する可能性もあります。いずれにしろ、この探査は彗星の性質やクレーター形成過程を調べる上で、非常に貴重な機会であることはまちがいありません。そのため地上の望遠鏡では、この前後に特別の観測枠を設けているところが多くなっています。
突入時刻は、現在のところ7月4日6時10分(世界時)と予定されています。これは、すばる望遠鏡があるハワイ時間では7月3日20時10分に相当し、薄明終了前後で十分に観測ができますが、欧州の地上大型望遠鏡があるチリではすでに彗星が沈んでおり、突入時の観測はできません。
国立天文台のすばる望遠鏡では、ディープ・インパクト探査を支援するため、すでに所長裁量による観測時間が確保されていますが、このほどハワイ・マウナケア山頂にあるケック望遠鏡1号機・2号機、および北天ジェミニ望遠鏡、それにチリにある南天用ジェミニ望遠鏡と共同で観測提案の公募をすることなりました。それぞれの望遠鏡で、各望遠鏡の特徴を最大限に生かした観測ができるよう、三つの観測所長間で調整を行うことを前提としています。また、どの観測所で取られたデータも、その質を確認した後に直ちに一般公開されることになっています。このような共同での観測提案の公募は初めての試みで、その成果が大いに期待されるところです。
2005年3月20日 国立天文台・広報普及室