すばる望遠鏡、木星の約40倍の質量を持つ若い伴星を発見

 国立天文台、神戸大学、東京大学、総合研究大学院大学などからなる研究チームは、おうし座にある恒星のまわりで、木星の質量の40倍ほどしかない若い伴星を発見しました。若い恒星の周囲を回る伴星としては、これまで発見された中でも質量が軽い天体のひとつで、もう少し軽ければ惑星になっていただろうと考えられます。

 すばる望遠鏡では、コロナグラフ撮像装置(CIAO)を用いて、おうし座の方向にある若い恒星を数多く観測し、その周りを回る惑星の候補天体を直接撮影する観測プロジェクトを進めています。この装置は、波面補償光学装置(AO)を使用して星の像をシャープにした後、コロナグラフと呼ばれるマスクを用いて中心の星の光を覆い隠し、その周囲にあるかすかな天体を直接撮影するものです。年老いた恒星の周囲にある天体に比べると、生まれたての恒星の周りに存在する若い低質量天体(褐色矮星や惑星)は明るく輝いているので、より発見しやすいことから、研究チームではおうし座の方向にある若い恒星を狙って、成果を上げてきました(国立天文台 アストロ・トピックス (10))。

 研究チームは、新たに撮影した おうし座DH星の画像上で、この星のそばで、わずか250分の1の明るさで輝く天体に注目しました。この天体は過去に撮影された画像にも写っていましたが、それらの画像と今回の画像を比較すると、この天体はDH星と共に動いており、たまたま同じ方向にある背後の天体ではなく、DH星の周囲を回っている伴星と判明しました。研究チームは、再びすばる望遠鏡を用いて、この伴星の性質をより詳細に観測したところ、その表面温度は絶対温度で2700度から2800度、表面での重力加速度が木星の約4倍、質量にして木星の約40倍の天体であることがわかったのです。質量が木星の13倍より軽い伴星を惑星、13倍以上で80倍以下を褐色矮星と呼ぶことから、今回見つかった伴星は褐色矮星に分類されます。

 研究チームのひとりである神戸大学自然科学研究科の伊藤洋一(いとうよういち)さんは「私たちの観測手法は、木星程度の質量を持った若い惑星を検出できる感度がある。太陽以外の恒星を回る惑星の直接撮影に一歩近づいた」と話しています。系外惑星が直接、観測される日も近いのかも知れません。

参照

2005年2月25日            国立天文台・広報普及室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)