土星探査機カッシーニから切り離されて衛星タイタンへの着陸に成功した小型探査機ホイヘンスが話題を集めている中、やや影がうすくなっていた火星探査ですが、まだまだ運用が延長され、いろいろな調査が行われています。そのひとつとして、火星探査車オポチュニティが探査の途中で隕鉄を発見し、その画像を公開しました。
隕鉄とは、ほとんどが鉄やニッケルといった金属でできた隕石の一種で、主に小惑星に起源があると言われています。地球に落下する隕石のほとんどは小惑星起源といわれています。小惑星の中でも、過去に大きな惑星になりかけて、再び破壊されたものもあります。大きくなると内部が溶融し、中心部に重い金属である鉄やニッケルがたまり、外層部に軽い岩石質の物質が浮いていきます。これを分化と呼びます。分化できるほど大きな惑星になりかけてから破壊されると、かつて中心部にあった部分からは、鉄やニッケルの金属が主成分の破片が生じるわけです。これが地球に落下したものが隕鉄となります。
今回、火星で発見されたバスケットボール程度の大きさの隕石は、そのオポチュニティの成分分析から、地球の隕鉄とほとんど同じで、鉄とニッケルからできている隕鉄であることがわかったのです。隕鉄が表面に存在したことから、実はもっと数が多いはずの隕石があってもいいのではないか、という疑問も生じてきました。隕石の場合は、すぐには火星外起源のものであるとは断定できませんから、これまで調査してきた岩石にもあったのかもしれません。そしてまた、火星地形の歴史にも情報をもたらす可能性があります。この地域がはたして現在も埋もれつつあるところなのか、あるいは嵐などで次第に表層がはがれつつあるのかが、この隕鉄を調べることでわかるかもしれません。その意味で、この隕鉄の発見は重要といえるでしょう。いずれにしろ、地球以外の惑星で、その惑星以外の起源を持つ隕石が発見されたのは初めてのこととなります。
2005年1月20日 国立天文台・広報普及室