山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、5月15日 (世界時、以下同じ) の観測から、17.0等の超新星を発見しました。この超新星は、おとめ座方向にある NGC 5177 銀河の中にあり、板垣さんご自身が所有する口径60センチメートルの反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影された複数の画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2010cr」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次のとおり。
発見日時 2010年5月15.61日 = 5月15日14時38分 (世界時) 赤経 13時 29分 25.03秒 赤緯 +11度 47分 46.4秒 (2000年分点) 発見等級 17.0等
板垣さんの観測によると、この超新星は NGC 5177 銀河の中心から東に11秒角、南に3秒角離れた位置にあります。板垣さんは、発見前の5月1日に撮影した同じ場所の画像にも、この天体が16.3等で写っていたと報告しています。しかし、それ以前に撮影した画像には、2007年3月17日の撮影 (限界等級19.0等) を含め、この天体は写っておらず、DSS (注) の画像にもこの天体は写っていなかったということです。
アメリカのニューヨーク州の D. Bishop さんは、4月16日に撮影した画像にこの天体を18.0等で独立に発見していたと報告しています。
板垣さんは去る5月9日に、おとめ座の別の銀河に超新星を発見したばかりです。板垣さんによる超新星の発見は、これで今年に入って3個目です。また、今回の発見を含めた超新星の通算発見数は59個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
2010年5月19日 国立天文台・広報室