山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、3月11日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.9等の超新星を発見しました。この超新星は、かみのけ座方向にある銀河 (SDSS J125925.04+275948.2) の中にあり、板垣さんご自身が所有する口径60センチメートルの反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測(限界等級19.5等) により撮影された多数の画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009ai」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次のとおり。
発見日時 2010年3月11.755日 = 3月11日18時7分 (世界時) 赤経 12時 59分 24.03秒 赤緯 +27度 59分 47.1秒 (2000年分点) 発見等級 16.9等
板垣さんの観測によると、この超新星は母銀河の中心から西に12秒角、南に1秒角離れた位置にあります。板垣さんは、今年2月24日の撮影 (限界等級18.5等) も含め、これまでにこの場所を何度も観測していましたが、いずれもこの 天体は写っていませんでした。また、DSS (注1) の画像にもこの天体は写っていませんでした。
一方、米国ミシガン大学の W. Zheng さんらは、3月8.43日にマクドナルド天文台 (米国テキサス州) にある45センチメートル望遠鏡による観測画像から、この超新星を独立に発見しました。また、マクドナルド天文台の J. Caldwell さんは、3月11.24日に同天文台の9.2メートル望遠鏡を使った低分散分光観測を行い、その結果、この超新星は極大数日前の状態にある通常のIa型の超新星(注2) であることを示しました。
板垣さんにとって、今回が今年最初の超新星発見となりました。これで今回を含めた超新星の通算発見数は57個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。板垣さんのさ らなる活躍に期待します。
注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星 (はくしょくわいせい) が何らかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。
2010年3月15日 国立天文台・広報室