坪井さん、NGC 5370 銀河に超新星を発見

 広島県広島市の坪井正紀 (つぼいまさき) さんは、1月7日 (世界時、以下同じ) の観測から、14.4等の超新星を発見しました。この超新星は、おおぐま座方向にある NGC 5370 銀河の中にあり、口径30センチメートルの反射望遠鏡 (f/5.3) を用いたCCD観測 (限界等級17.7等) により撮影された複数枚の画像の中から発見されました。

 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2010B」と命名されました。

 この天体の発見日時、位置、発見等級は次のとおり。

発見日時 2010年1月7.730日 = 1月7日17時31分 (世界時)
赤経 13時 54分 08.7秒
赤緯 +60度 40分 50.4秒 (2000年分点)
発見等級 14.4等

 坪井さんの観測によると、この超新星は NGC 5370 銀河の中心から、西に5.1秒角、北に9.1秒角離れた位置にあります。坪井さんは、昨年9月6日と11月21日にもこの場所を観測していましたが、その画像 (限界等級はいずれも16.7等) には、この天体は写っていませんでした。また、DSS (注1) の画像にもこの天体は写っていませんでした。 坪井さんは発見の翌日にもこの天体を観測し14.5等を得たと報告しています。

 埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんは、1月8日に山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが栃木県高根沢町にある口径30センチメートルの反射望遠鏡 (f/7.8) を用いて撮影したCCD画像 (限界等級19.0等) から、この天体の位置と等級 (14.4等) の測定をしています。

 また、門田さん自身も、1月8日に口径25センチメートルの反射望遠鏡 (f/5) でこの天体を撮影しており、その10枚のCCD画像 (限界等級18.9等) の中に、14.5等のこの天体を確認しています。

 また、1月9日の県立ぐんま天文台 (群馬県吾妻郡高山村) およびMDM天文台 (米国アリゾナ州) による分光観測から得られたスペクトルが示す特徴から、この天体はIa型 (注2) の超新星と推測されています。

 今回の超新星発見は、坪井さんご自身にとって初めての新天体発見であり、日本人による今年初めての超新星発見となります。

 坪井さんは「天体捜索を始めて11年目、やっと見付けることができました。この気力が継続できたのも天文仲間の皆様のおかげと感謝しています」と喜びを語っています。坪井さんの今後のさらなる活躍を期待しています。

注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星 (はくしょくわいせい) が何らかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。

参照:

2010年1月12日             国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)