しし座流星群と言えば、2001年に日本で見られた流星嵐 (あらし) を思い出す方も多いことでしょう。今年は、この2001年と比較すると数十分の一にも及びませんが、ここ数年の中では少々多めに出現するかもしれない、と予想されています。
しし座流星群は、11月中旬ごろに活動する流星群です。これまで、母天体テンペル・タットル彗星 (すいせい) (55P/Tempel-Tuttle) の公転周期であるおよそ33年ごとに、流星雨、あるいはもっと規模の大きい流星嵐が観察されてきました。近年では1998年から2002年にかけて、数回の大規模な流星嵐が観察され、日本でも2001年に1時間あたり千個を超える流星嵐が観察されました。しかし、ここ数年は流星の元となるチリの粒が濃密な部分も遠ざかり、ほとんど見られない程になっています。ところが近年の理論に基づく研究結果によると、今年は約500年前に母天体から放出された古いチリ粒の流れの中を地球が横切り、ここ数年の中では「やや多め」に観察できるかもしれないと予想されているのです。
この研究によれば、しし座流星群が最も多く出現する「極大」は、11月18日の6時から7時ごろ (日本時、以下同じ) と予想されます。この時間帯の観察に適しているのは、中央アジアの近辺です。残念ながら日本では、この時間帯は、明け方空が明るくなった後のため、最も活発な様子を観察することはできません。しかし、空が明るくなる直前の4時から5時台にかけて、流星が急に増えるのが観察できるかもしれません。
気になる流星数は研究者によっても違いますが、ZHR (注) の値では、8月に見られるペルセウス座流星群や、12月に見られるふたご座流星群の2倍にあたる200程度と予想されます。しかし、日本で見える時間帯は、この数分の一となってしまうでしょう。
一つの予測に基づくと、日本で4時から5時の1時間に見られる流星数は、ZHRの値で約55個と計算されます。このとき、実際に一人が見ることのできる流星数は、6等星が見えるような空が暗い場所では1時間に約35個ですが、4等星が見えるような一般的な場所では10個弱、また2等星しか見えないような市街地ではさらに少なくなり2-3個くらいとなります。
この予想値は誤差が大きく、実際には、見える流星がこれより少ないことも十分に考えられます。また、極大が遅くなると日本で見られる流星数が少なくなり、逆に早まると多くなる可能性も考えられます。実際、昨年は、極大が予想よりも1時間程遅く観測されました。
このような状況を考えると、今年は、しし座流星群の観察を広くお勧めできる状況ではないため、国立天文台ではキャンペーンのようなイベントを実施しませんが、熱心に流星を観察してみたいという方は、この機会にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。11月18日の明け方は、月明かりにじゃまされることもなく、流星の観察には好条件です。かなり寒い時期ですので、観察する時には、暖かい服装をするよう気をつけて臨んでください。
注:ZHRとは、1時間あたりの天頂修正流星数と呼ばれる値で、雲が無く、6.5等級の星まで見え、流星群の放射点が天頂にある理想的な条件で一人による観測を仮定した場合の1時間あたり流星数。一般的には、実際に見える流星の数は、これよりもかなり少ない。
2009年11月13日 国立天文台・広報室