山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、11月6日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.0等の超新星を発見しました。この超新星は、うさぎ座方向にある NGC 1832 銀河の中にあり、板垣さんご自身所有の口径60センチメートル反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影された複数枚の画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009kr」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。
発見日時 2009年11月6.730日 = 11月6日17時31分 (世界時) 赤経 5時 12分 03.30秒 赤緯 -15度 41分 52.2秒 (2000年分点) 発見等級 16.0等
板垣さんの観測によると、この超新星は NGC 1832 銀河の中心から西に0.3秒角、南に35.5秒角離れた位置にあります。板垣さんは、過去にこの場所を観測し多数の画像を得ていましたが、先月10月3日に行った観測の画像 (限界等級18.5等) を含め、その中にはこの天体が写っていませんでした。またDSS (注1) の画像にもこの天体は写っていませんでした。
宮城県大崎市の遊佐徹 (ゆさとおる) さんは、11月7日にアメリカのニューメキシコ州にある口径25センチメートルの反射望遠鏡 (f/3.4) を遠隔操作し、撮影した7枚のCCD画像 (限界等級18.5等) にこの天体を確認しています。また、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんも、同日25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いて撮影した16枚のCCD画像 (限界等級18.0等) の中に、 この天体を確認しています。
なお、2004年12月、この銀河中心から北東に約0.5分角離れた場所に、Ib型 (注2) の超新星2004gqが出現しています。
板垣さんによる超新星の発見は、10月11日の2009jsに続き、今年に入って9個目の発見となりました。また今回の発見を含めた超新星の通算発見数は53個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星 (はくしょくわいせい) がなんらかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。
2009年11月11日 国立天文台・広報室