山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、10月11日 (世界時、以下同じ) の観測から、17.2等の超新星を発見しました。この超新星は、おひつじ座方向にある NGC 918 銀河の中にあり、板垣さんご自身所有の口径60センチメートル反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.5等) により撮影されたたくさんの画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009js」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。
発見日時 2009年10月11.689日 = 10月11日16時32分 (世界時) 赤経 2時 25分 48.30秒 赤緯 +18度 29分 26.2秒 (2000年分点) 発見等級 17.2等
板垣さんの観測によると、この超新星は NGC 918 銀河の中心から西に35秒角、南に20.5秒角離れた位置にあります。板垣さんは、DSS (注1) の画像にこの天体が写っていないことを確認しています。
また中野さんは、宮城県大崎市の遊佐徹 (ゆさとおる) さんが、10月12日にアメリカのニューメキシコ州にある口径25センチメートルの反射望遠鏡 (f/3.4) を遠隔操作し、撮影した5枚のCCD画像 (限界等級は19.5等) に、この天体を16.7等で確認したことを付け加えて報告しています。
板垣さんの他にも、Katzman自動撮像望遠鏡による米国のリック天文台の超新星捜索 (LOSS/KAIT) の画像から、カリフォルニア大学の X. Parisky さんらが、10月11.44日に17.2等でこの超新星を独立発見しています。
また10月12日に、同天文台 (米国) の口径3メートルの反射望遠鏡を使用してこの超新星の分光観測を行った結果、そのスペクトルが示す特徴から2005年に発見された超新星「2005cs」に非常に似ているII型 (注2) の超新星であることが分かりました。
板垣さんによる超新星の発見は、8月24日の2009im以来、今年に入って8個目の発見となりました。また今回の発見を含めた超新星の通算発見数は52個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星がなんらかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。
2009年10月15日 国立天文台・広報室