すばる望遠鏡主焦点カメラで取得された渦巻銀河 NGC 6946 の画像解析から、この銀河の外縁部の活発な星形成活動の様子が明らかになりました。
銀河円盤をほぼ真上から見ることができる NGC 6946 は、銀河内の場所による星形成活動の差異を調べるのに適した銀河です。今回の観測でデータを取得するために使った観測時間はわずか40分程度でしたが、良質な画像データを取得することができ、星形成活動を示す電離水素領域を1413個も検出することに成功しました。
今回の観測で得られたデータの特長は、星形成活動の指標となる水素の電離輝線を捕らえるフィルターを用いて、今まで観測されてこなかった銀河の外縁部までを広く深く観測したことです。この研究によって、今まで詳しく調べられていた領域の2倍以上外側にあたる、銀河中心から半径60,000光年以上という辺境部にも、電離水素領域が存在することが初めてわかりました。このことは、銀河の星がわずかしか存在しないような領域でも、星が生まれていることを示すものです。
さらに、電波観測から得られている中性水素の分布と電離水素領域の分布の比較を行ったところ、多くの電離水素領域が中性水素の少ない部分の縁をなぞるようにして分布していることがわかりました。このことから、中性水素の局所的な疎密が星形成活動を引き起こす条件の一つであろうと考えられます。
これまで、銀河外縁部における星形成活動はあまり理解されていませんでした。この観測データは、銀河外縁部の研究を行う上で、良質で広範囲をカバーした基礎的観測データとして役立つと期待されています。
この観測研究は、「すばる望遠鏡観測研究体験企画 (注)」に参加した学生によって行われたもので、日本天文学会2009年秋季年会で報告されました。
注:ハワイ観測所で毎年開催している、大学学部生対象の体験企画。事前に望遠鏡や観測装置の仕組みを学ぶとともに、実際にハワイ観測所へ渡航し、参加者自身の手ですばる望遠鏡を使った観測を行うことを通して、観測天文学研究を体験する。
2009年9月18日 国立天文台・広報室