国際天文学連合、64の流星群の公式名称を決定

 8月3日からブラジルのリオデジャネイロで開催されていた国際天文学連合 (IAU) の総会で、64におよぶ流星群の公式名称についての議論があり、採択の結果、その命名とともに今後の名称付与の方法についても確定しました。

 流星群には、天球上で放射点と呼ばれる特有の点が存在します。流星群に属する流星の経路を流れた方向と逆側に延長すると、この放射点に収束します。通常、放射点のある星座名、あるいはその近くの恒星の名称を使って、流星群を区別してきました。アストロ・トピックス (492) でキャンペーンを行うことをお知らせした8月の流星群であるペルセウス座流星群も、放射点がペルセウス座にあるため Perseids と呼ばれてきました。

 しかし、中には流星群を生み出す母親である彗星 (母彗星) の名前で呼ばれてきた流星群も存在します。10月に出現するジャコビニ流星群 (Giacobinids) がその代表です。また、異なる時期に出現する別の流星群が、同じ星座に放射点を持つために同じ名称が使われ、混乱していた例もありました。

 そこで隕石や流星を扱う国際天文学連合第22委員会では、これらの問題を解決し公式名称を決定するため、2006年にチェコ・プラハで開催された前回の総会において、作業部会を設け、8人の委員を中心に3年にわたって議論を続けてきました。日本からも阿部新助 (あべしんすけ) 台湾國立中央大學天文研究所助理研究學者が作業部会に参加しました。議論では、日本のアマチュアのデータが大いに活用されただけでなく、命名方法についても日本流星研究会などのアマチュアから建設的な意見がまとめられ提案されています。

 このような3年にわたる議論の集大成として、今回64の流星群を確定流星群とすることとその名称が提案され、8月7日に開催された第22委員会で投票の結果、採択されました。今回の決定ではさらに、流星群名には基本的に彗星名は用いず星座名を用いることや、同じ母彗星に対して複数の流星群が存在する場合の命名のルールも、細かく決められました。また新しく流星群が観測された場合に確定流星群として扱うまでの条件や、命名の際に同じ名称を用いないなどの方法も認められました。この結果、ジャコビニ流星群という名称が公式でなくなることに一抹の寂しさもありますが、3年前の惑星の定義と同様、名称や定義を共通化するという国際天文学連合の役割の一つが果たされたと言えるでしょう。

 ところで、英語の公式名称が決まったことに対応して、和名をどうするかについては、これからの議論となります。今回の第22委員会で司会を務めた渡部潤一 (わたなべじゅんいち) 国立天文台准教授は「準惑星か矮惑星かといった3年前のような大きな問題にはならないものの、自動的に和名が決まらないところもある。日本流星研究会などのアマチュアの方々とよく話し合って、早急に決めていきたい」と話しています。

 今回採択された流星群や、今後名称決定が検討されている286に及ぶ流星群の情報は、国際天文学連合第22委員会のデータベース (IAU Meteor Data Center のウェブページ) で公開されています。

参照:

2009年8月10日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)