国立天文台三鷹構内に7月7日、「星と森と絵本の家」開館

 七夕にあたる7月7日、国立天文台三鷹の構内に「三鷹市 星と森と絵本の家」が開館しました。この「星と森と絵本の家」(以下、絵本の家) は、地域の子供たちや親世代の市民、おじいちゃん・おばあちゃん世代の市民が、絵本の文化と出会う場であり、また、絵本と台内の自然環境を媒介として宇宙・自然・科学への知的好奇心を育む場となることも目指しています。

 国立天文台は、これまで、施設公開や三鷹ネットワーク大学への参加、星空案内人 (星のソムリエ) 養成などを通じて、地域に開かれた天文台となるよう様々な取り組みを進めてきました。今年2月には三鷹市と包括的な「相互協力に関する協定」(注1) を結ぶなど、この取り組みが未来に向けて継続することを目指しています。その中の一環として開館することになったのがこの絵本の家です。

 国立天文台は「みたか・子どもと絵本プロジェクト」(注2) の趣旨に同意し、1915年 (大正4年) 建築の「旧1号官舎」(注3) を絵本の家とすることで三鷹市に無償譲渡し、またその敷地を無償貸し付けしました。三鷹市はこの1号官舎をいったん解体し、現在の建築基準法に沿うように復元・再築を行ったうえで、新たに管理棟を併設し、絵本の家として整備しました。

 絵本の家は、星 (星・地球)、森 (森・動植物)、ひと (人・暮らし・言葉)というテーマを中心とした約2000冊の絵本を所蔵します。これらの絵本をくつろぎながら読める畳の部屋を中心に、3つのテーマ展示室が設けられました。建物の再組み立ての様子を紹介する回廊ギャラリー、旧1号官舎の歴史を紹介する旧玄関/建築展示室、そしてメインとなる絵本展示室です。絵本展示室では、初回企画展として「見る・知る・感じる絵本展−月とおつきさま−」を開催しています。私たちに最も身近な天体である「月」が、絵本の世界でどのように扱われているのかをご覧になれますので、ぜひお楽しみください。また、大正時代の建物にふさわしく、市民や天文台関係者から寄付された過去の暮らしを感じる懐かしい品々も、書斎等に展示しています。

 開館にあたって清原慶子 (きよはらけいこ) 三鷹市長は、「この絵本の家では、まずは絵本をゆっくり楽しんでいただきたいと思います。大がかりなイベントやプログラムを提供するというよりも、子どもたちが主体的に、自分の感性や発見に導かれつつ、ふれあいの中で『星と森と絵本の家の時間』を過ごすことを大切にしていきたいと思います。ゆったりとした『星と森と絵本の空間』の中で、人や自然や自分と向き合いながら、人を思いやる心や科学する心の土台が育つことを願っています」と語っています。絵本の家の創設には、都市型の少子高齢化地域における新しい子育て支援や高齢者支援のあり方の提案も含めて、地域の子供たちがすくすくと成長していくことへの願いがこめられているのです。

○三鷹市 星と森と絵本の家
 場所  :三鷹市大沢2-21-3
      国立天文台正門より入場可
      徒歩、自転車または公共交通機関をご利用ください
 電話  :0422-39-3401
 開館時間:10:00 - 17:00 (入館は16:30まで)
 定休日 :火曜日
 入館料 :無料

注1:正式名称は「国立天文台と三鷹市との相互協力に関する協定」

注2:三鷹市絵本館構想検討会議が『みたか・子どもと絵本プロジェクト〜みんなで育む大切なもの〜』として2005年2月に提言したもの。施設中心ではなく、絵本との出会いや人と人との交流などソフト中心に展開される事業全体の構想。

注3:1915年 (大正4年) に当時の天文台の高等官の官舎として東京帝国大学営繕課によって設計、建設された。台長の住居として使用されたこともある。近代の住宅の変化を伝える貴重な文化財として、国立天文台、三鷹市、市民の間で保全及び活用が検討されていた。復元・再築作業が完了した2009年6月に「三鷹市登録有形文化財」第一号として登録された。

参照:

2009年7月7日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)