隕石から太陽系最古の花こう岩片を発見

 花こう岩は、古くから城の石垣や墓石に使用されてきた、地球ではおなじみの岩石です。地球の大陸地殻にはふんだんに含まれていて、代表的な岩石と言えるでしょう。しかし、実は太陽系には、それほど普遍的に存在するものではありません。その形成には「水」の関与が必要と考えられているからです。火星や金星、小惑星のようなドライな地球型惑星には、これまで発見されていません。したがって、水惑星である地球独自の岩石であるというのが定説でした。ところが、その定説を覆すような発見が報じられています。

 それは、広島大学大学院理学研究科の寺田健太郎 (てらだけんたろう) 准教授による、1949年にモンゴルに落下した普通隕石の分析結果です。この隕石は、角礫 (かくれき) 岩質普通隕石といわれるもので、隕石のもとになった天体上での地質学的活動によりバラバラに壊れた砕屑物 (さいせつぶつ) が含まれています。この破砕物の中にも花こう岩が含まれていました。そこで、広島大学の局所年代分析装置SHRIMP (シュリンプ) でこの花こう岩の年代測定を行ったところ、約45億3千万年前という年代を示すことを突き止めたのです。これは太陽系の誕生から間もない時期です。しかも、この年代は地球の花こう岩の形成年代よりも古い値です。地球では、カナダ・アカスタ片麻岩が約40億年前と最古のものとされ、鉱物のレベルでも、西オーストラリア・ジャックヒル堆積岩中のジルコンが44億年前にすぎません。約45億3千万年前という値は、花こう岩としては太陽系最古の形成年代であると言えるでしょう。

 この結果は、太陽系形成初期に存在した微惑星上で、花こう岩を形成するメカニズムが存在したことを示す直接的証拠であり、同時に従来の「地球型惑星の進化モデル」にパラダイムシフトを促す極めて重要な知見となると考えられます。

 本研究は、2009年6月17日発行の米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカルジャーナル」誌で発表されました。また、2009年7月3日発行の「サイエンス」誌のエディターズチョイスで、この内容が取り上げられました。

参照:

2009年7月6日              国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)