板垣さん、NGC 3905 銀河に超新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、4月28日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.8等の超新星を発見しました。この超新星は、コップ座方向にある NGC 3905 銀河の中にあり、板垣さんご自身所有の口径60センチメートル反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影されたたくさんの画像の中から発見されました。

 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009ds」と命名されました。

 この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。

発見日時 2009年4月28.56日 = 4月28日13時26分 (世界時)
赤経 11時 49分 04.11秒
赤緯 -9度 43分 44.9秒 (2000年分点)
発見等級 16.8等

 この超新星は NGC 3905 銀河の中心から西に12秒角、北に3秒角離れた位置にあります。

 板垣さんは、3月17日にこの場所を観測していましたが、そのときの画像 (限界等級は18.5等) にも、またDSS (注) の画像にも、この天体は写っていませんでした。

 中野さんは、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんが4月28日に25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いてこの天体を観測し、16.6等であったことを付け加えて報告しています。

 また、4月29日と30日の両日、県立ぐんま天文台 (群馬県) の衣笠健三 (きぬがさけんぞう) さんらのグループは、ぐんま天文台の1.5メートル反射望遠鏡を用いてこの天体の低分散分光観測を行いました。得られたスペクトルからは、この天体が極大光度に達する前のIa型超新星 (注2) であることが示唆さ れています。

 板垣さんは、3月に彗星 (C/2009 E1、板垣彗星) を発見したばかりです。板垣さんによる超新星発見は、今年に入って2個目で、また今回の発見を含めた超新星の通算発見数は46個 (独立発見を含む) となりました。日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。

注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星がなんらかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。

参照:

2009年5月1日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)