野口さん、NGC 5301 銀河に超新星を発見

 千葉県香取市の野口敏秀 (のぐちとしひで) さんは、3月11日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.5等の超新星を発見しました。この超新星は、りょうけん座方向にある NGC 5301 銀河の中にあり、口径23センチメートルのシュミット・カセグレン式反射望遠鏡 (f/6.3) を用いたCCD観測 (限界等級18.0等) により撮影された多数の画像の中から発見されました。

 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009at」と命名されました。 この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。

発見日時 2009年3月11.633日 = 3月11日15時12分 (世界時)
赤経 13時 46分 26.68秒
赤緯 +46度 06分 09.1秒 (2000年分点)
発見等級 16.5等

 この超新星は NGC 5301 銀河の中心から東に21秒角、南に15秒角離れた位置にあります。野口さんは、2005年1月10日にこの場所を撮影していましたが、そのときの画像 (限界等級18.5等) にも、またDSS () の画像にも、この天体は写っていませんでした。

 中野さんは、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんが月明かりのある3月11日の夜に、口径25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いて撮影した画像から、この天体を16.7等で確認したことを報告しています。また中野さんは、滋賀県守山市の井狩康一 (いかりやすかず) さんも、3月11日に口径26センチメートル反射望遠鏡 (f/7) を用いて得られた複数枚のCCD画像にこの天体を確認したことと、井狩さんから寄せられた10枚の画像を平均しこの天体の明るさを15.9等と測定したことを報告しています。中野さんはさらに、山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが、ご自身が保有する栃木県にある高根沢観測所の口径30センチメートル反射望遠鏡 (f/7.8) によって発見前にあたる3月10日に撮影されたCCD画像を調べた結果、この天体が16.5等で写っているのを確認したと付け加えています。

 野口さんによる超新星の発見は、今回の「2009at」が初めてです。野口さんは、かつて彗星捜索をしていましたが、その後観測条件の悪化や冷却CCD装置の登場により、超新星捜索に切り替えたそうです。明るいNGC天体を中心に、年80夜ほどの観測を10年続けた結果、今回の発見に至りました。野口さんの初めての発見を称えるとともに、今後のさらなる活躍を期待いたします。

:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

参照:

2009年3月13日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)