宇宙科学の発展に寄与した若手研究者の優れた業績をたたえる宇宙科学奨励賞を、国立天文台・ひので科学プロジェクトの勝川行雄 (かつかわゆきお) 助教が受賞し、3月10日に東海大学校友会館にて、授与式が行われました。
宇宙科学奨励賞は、宇宙理学分野及び宇宙工学分野で独創的な研究を行い、宇宙科学の進展に寄与する優れた研究業績を挙げた若手研究者に授与されます。
勝川氏は、太陽物理での大きな謎の一つであるコロナ加熱問題について、日本の太陽観測衛星「ようこう」の観測データを独創的な解析手法を使って研究し、コロナ加熱に寄与すると考えられる微小な爆発現象が、黒点付近で毎秒数百万個発生していることを示しました。また、他の太陽観測衛星や地上観測のデータを利用し、コロナ加熱が発生する場所が磁場や速度場の微細な構造に強く依存していることを明らかにしました。これらの研究を進めながら勝川氏は、太陽観測衛星「ひので」に搭載された、可視光・磁場望遠鏡 (a href="#fn1">注) の開発・作成に貢献し、衛星打ち上げ後は望遠鏡の運用責任者として活躍しています。これらの研究業績と衛星搭載望遠鏡の開発・運用に対する寄与が、今回の受賞理 由となりました。
今回の受賞について、勝川氏は、「『ようこう』や『ひので』の開発・運用に長期に渡りご尽力された、宇宙科学研究本部や国立天文台のひのでチームの皆様、特に常田佐久先生に感謝したいと思います。また、『ようこう』、『ひので』のプロジェクトマネージャーを務められた、今は亡き小杉健郎先生に受賞の報告ができないのが残念でなりません。『ひので』によってコロナを加熱するメカニズムの断片が見え始めてきました。その断片を集めて謎の解明につなげていきたいです」と話しています。
注:可視光・磁場望遠鏡は、可視光領域において高い空間分解能で連続して太陽を観測する観測装置です。太陽専用望遠鏡としては衛星軌道上で最大口径を持っています。
2009年3月10日 国立天文台・広報室