私たちの住む地球は、水の惑星です。私たち自身を含む地球の生命は、地球に豊富に存在する水によって生命活動を支えられています。当たり前のように地球に存在している水ですが、その起源はいまだ明らかではありません。地球のような惑星には、いったいどのようにして水がもたらされたのでしょうか。
水の起源についてはいくつかの仮説があります。その中でも有力な説に、惑星の材料である塵の中に含まれていた固体の水、つまり氷を起源とする説があります。また、形成期の惑星に多数の彗星 (氷と塵の塊) が衝突して、水がもたらされたという説もあります。実際、生まれたての星の周りにある塵を観測してみると、確かにそこには氷が存在していることが明らかになっています。しかしながら、これまでの観測では星の周りを取り巻く塵のどの場所に氷が豊富に含まれているのかについては、よくわかっていませんでした。
そこで、神奈川大学などの研究者からなる研究チームでは、すばる望遠鏡に搭載された近赤外線の撮像観測装置CIAO (注1) を使って、惑星が誕生している現場である原始惑星系円盤を観測し、氷がどこに分布しているか調べました。その結果、氷が原始惑星系円盤の表面に存在していることを初めて明らかにしたのです。
今回、研究チームが氷を見つけた場所は、中心の恒星から約140天文単位 (注2) 以上離れた場所でした。惑星が生まれるのは、もっと中心の恒星に近い場所と考えられています。したがって、この研究で見つかった氷は、惑星の材料というよりはむしろ彗星の材料と言う方がよいのかもしれません。いずれにせよ、今回の研究の成果は、惑星の水の起源を解き明かす上で重要な手がかりになると期待されます。
この研究は、2009年1月10日発行の米国天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されています。
注1:明るい中心天体の光を遮ることによって、その近くにある暗い天体のシャープな画像を取得することに目的を絞った近赤外線観測装置
注2:1天文単位は太陽から地球までの平均距離に相当し、キロメートルに換算すると1億4959万7870キロメートルになる。
2009年2月27日 国立天文台・広報室