褐色矮星は、質量が太陽質量のたった0.08倍未満しかなく、あまりにも軽いので自分で輝くことができなかった星です。そのため恒星になりそこなった星とも言われます。とても暗いため、褐色矮星が初めて観測的に確認されたのは1995年になってからのことで、本格的な研究が進んだのもごく最近です。
星が生まれるときに、どのくらいの質量の星がそれぞれどのくらいの数生まれるかというテーマは1950年頃から研究が始められ、現代でも盛んに研究されているテーマです。これまでは主に観測しやすい恒星について、調べられてきましたが、一方で観測が難しい褐色矮星がどれほど誕生しているのかについてはよくわかっていませんでした。褐色矮星は恒星に比べて暗く、恒星に比べて近くのものしか観測できなかったのです。しかし、近年の観測技術の発達により観測可能な褐色矮星の数が増え、褐色矮星がどのくらい誕生しているのかについて観測的に調べることができるようになってきたのです。
すばる望遠鏡に搭載されていた近赤外線の観測装置 (波長感度0.8から2.5マイクロメートル) による星形成領域の観測から、インド・日本の共同研究チームは生まれたばかりの褐色矮星の質量分布を明らかにしました。そして、「太陽よりも軽い星になるにつれて星の個数は増え続け、褐色矮星の質量領域に達しても増え続けている」ことが、世界で初めてわかりました。一方、違う星形成領域での研究からは「質量が太陽質量の約0.1倍の星までは軽い星ほど多くあるが、それよりも軽くなると急激に減少する」と報告されており、今回の結果と異なっています。このことは、同じ銀河系内でも場所によって褐色矮星の質量分布が異なっていることを示唆しています。
褐色矮星よりも10倍以上重い恒星については、それらが生まれたときの質量分布は、銀河系内や近くの銀河では、普遍的であると言われています。研究チームは今後、より多くの星形成領域での観測を進め、恒星や褐色矮星の質量分布がどのくらい違っているのか、違っているとすればどのような原因によるのか、研究を進めることにしています。
本研究は、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載予定です。
2009年2月10日 国立天文台・広報室