チリALMA観測所へ、最初のアンテナを引き渡し

 国立天文台も参加し、日米欧が協力して建設しているALMA (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計) は、チリ北部にある標高5000メートルのアタカマ砂漠で建設中の電波干渉計です。完成時には、可視光では観測することができない分子ガスやダストを詳細に調べることができるようになります。

 12月上旬に、記念すべき1台目のアンテナがチリALMA観測所へ引き渡されました。この最初のアンテナは、日本が製作したもので、国立天文台の委託により三菱電機株式会社が建設しました。

 ALMAは口径7メートルと口径12メートルの多数のアンテナがあたかも一つの電波望遠鏡であるかのように稼働するシステムです。日本と共同でALMA計画に携わっている北米と欧州が製作したアンテナも、まもなく、チリALMA観測所に引き渡される予定です。

 現地からは、「日本の共同研究者たちは、最先端技術を駆使したすばらしいアンテナを造り上げた」と賞賛の声が届いています。ALMAの建設地に到着したアンテナは、様々な性能評価を行います。要求される性能とは、たとえば、アンテナ表面のでこぼこは人間の髪の毛の太さより小さくなければならないとか、15キロメートル先のゴルフボールをとらえることができるほど正確に、アンテナの向きを制御できなければならないといった厳しいものです。また、標高5000メートルという高地での強風など過酷な気象条件に耐えて、高い性能を維持しなければなりません。

 1台目のアンテナ引き渡しが行われたことは、ALMA計画にとって、また、計画に携わる研究者や技術者にとって、一つの大きなマイルストーンです。チリALMA観測所のチームは、高感度の受信機といった観測に必要な装置の取り付けやテストなどを行い、科学的な観測に向けた準備を進めています。

 天文学では、新しい望遠鏡によってさまざまな天体が観測され、新たな姿が写し出される度に、また新たな謎が生まれています。私たち天文学者は、ALMAが完成することによって、銀河の形成・進化や多くの星・惑星系形成の解明に、さらに大きな一歩が踏み出せることを期待しています。

参照:

2009年1月9日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)