板垣さん、NGC 6643 銀河に超新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、12月19日 (世界時、以下同じ) の観測から、15.9等の超新星を発見しました。この超新星は、りゅう座方向にある NGC 6643 銀河の中にあり、板垣さんご自身が所有する口径60センチメートルの反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影された十数枚の画像の中から発見されました。

 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2008ij」と命名されました。

 この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。

発見日時 2008年12月19.45日前後 = 12月19日10時48分前後 (世界時)
赤経 18時 19分 51.81秒
赤緯 +74度 33分 54.9秒 (2000年分点)
発見等級 15.9等

 上記の赤経、赤緯は、板垣さんが撮影した画像のうち3枚の測定値の平均から求めたものです。これより、この超新星の位置を調べたところ、NGC 6643 銀河の中心から東に約23秒角、南に11秒角離れた位置にあることが分かりました。

 板垣さんは、昨年2月25日より以前と、最近では今年の12月16日にこの場所を観測していましたが、そのときの画像 (限界等級はそれぞれ19.5等と19.0等) には、この天体は写っていませんでした。また、DSS (注1) の画像でも、この位置には何も天体は写っていませんでした。

 中野さんは、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんが、25センチメートル反射望遠鏡を用いてこの天体を観測し、16.0等だったことなどを確認したことを付け加えています。

 またハーバード・スミソニアン天体物理学センターの P.Challis さんは、12月21日の分光観測によって得られたスペクトルの示す特徴から、この天体が、II型 (注2) の超新星と推定されることを報告しています。

 なお、この銀河には、2008年3月に16.6等の超新星「2008bo」が出現したばかりです。

 板垣さんによる超新星発見は、今月に入って2個目で、今年9個目となりました。今回の発見を含め、板垣さんの超新星発見数は通算43個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。

注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星がなんらかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。

参照:

2008年12月22日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)