「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2008」で、国立天文台の斎藤研究員が最優秀賞を受賞

 国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト (以下、CfCA) の斎藤貴之 (さいとうたかゆき) 研究員が、「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2008」 (主催:理化学研究所、開催日程:2008年9月16日・17日) のポスターセッションで、最優秀賞を受賞しました。

 このシンポジウムは、次世代スーパーコンピュータの開発を進めている理化学研究所 (以下、理研) が主催するもので、広く日本の計算機関連の研究者やメーカーが集まり、次世代スーパーコンピュータの切り開くサイエンス、そのための技術的ブレークスルー、高度な利用方法、人材育成について議論するためのものであり、今回で3回目になります。

 斎藤研究員は、このシンポジウムのポスターセッションにおいて、「衝突銀河の超高分解能シミュレーション:スターバーストと星団形成」と題した発表を行いました。内容は、従来の銀河衝突シミュレーションと比較して粒子数で2桁上回る大規模なシミュレーションを達成し、その結果、従来生じていなかったスターバーストや星団形成を再現して、そのメカニズムを明らかにしたというものです。

 この研究には、斎藤研究員が過去数年にわたって開発を進めてきた並列N体+SPH による銀河形成シミュレーションコード「ASURA」(注1) と本年4月にCfCA に導入された Cray XT4 システム (注2) が使われました。ASURA はこのほかにも、国立天文台の「天の川創成プロジェクト」の基盤ソフトウエアとして重要な成果をいくつも挙げています。

 また、ポスターで使われたコンピュータグラフィクスは、同CfCAの4次元デジタル宇宙 (4D2U) プロジェクトの武田隆顕 (たけだたかあき) 研究員が作成したものです。

 2日間のシンポジウム期間中に審査員投票と一般投票が行われ、書類選考を経て参加したポスターセッションにおける31人の発表者の中から、斎藤研究員が最優秀賞を受賞したものです。これは、大規模シミュレーションコードの性能とサイエンスの両方において、極めて高い評価がなされたためです。

 斎藤研究員は本年11月に米国テキサス州オースチンで開催される SC2008 (注3) へ、理研のレポーターとして派遣されます。

注1 並列 N体+SPH による銀河形成シミュレーションコード「ASURA」暗黒物質や恒星成分を質点 (N体粒子と呼ばれる) として置き換え重力相互作用を計算し、ガス成分の流体相互作用を広がりをもった粒子の相互作用として表す Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH) 法を用いて計算する手法。ガス系の重力相互作用は、やはり質点として計算する。斎藤研究員が独自開発した「ASURA」は、この手法に基づいたシミュレーションを並列計算機上で実行可能。

注2Cray XT4 システム
米国企業 Cray 社が開発したスーパーコンピュータ。国立天文台 天文シミュレーションプロジェクトでは、2008年4月に導入した。

注3 SC2008
スーパーコンピューティングに関する世界最大の国際会議。今回は米国テキサス州オースチンにおいて11月15-21日に開催される。今年で20回目を迎える。

参照:

2008年10月15日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)