カッシーニ探査機が土星に弧状環を発見

 土星探査機「カッシーニ」が、土星に新しい弧状環を発見しました。

 カッシーニ探査機は2004年7月に土星の周回軌道に入り、以後、土星本体や衛星・環などの観測を続けてきました。その間に新しい環の発見もなされ、2004年9月には2個 (仮符号は R/2004 S 1 と R/2004 S 2)、2006年9月には4個(仮符号は R/2006 S 1 〜 R/2006 S 4) の環を発見しました。そして今回、新たに2個の弧状環の発見が報じられました。

 環 (リング) は通常、惑星を取り巻くように存在していますが、惑星の周りを一周せず、弧状になっているものもあります。このような弧状環は海王星に存在することが知られていましたが、土星にもG環の内縁部に明るく光る弧状環がカッシーニ探査機により観測されていました。

 今回発見されたものは、土星の第XXXII (32) 番衛星 (注) メトネ (Methone)と第XLIX (49) 番衛星アンテ (Anthe) の軌道上にあるもので、土星中心の経度にして10度から20度の広がりを持っています。メトネの軌道上にある弧状環は2006年に観測が伝えられ、その際に R/2006 S 5 の仮符号が付けられていたもので、今回その存在を確認したことになります。アンテの軌道上にある弧状環には今回 R/2007 S 1 の仮符号が付けられました。これらは、いずれもそれらのすぐ内側を回っている第I (1) 衛星ミマス (Mimas) と軌道共鳴の状態にあり、ミマスの引力の影響を受けて形作られているものです。いずれの衛星もそれぞれの弧状環の中にあり、その弧状環を形作っている多数の粒子は、周囲を移動している宇宙塵がその衛星に衝突した際に衛星から剥がれ落ちたものと考えられています。

 衛星ヤヌス (Janus) とエピメテウス (Epimetheus) に付随する環 R/2006 S 1と、衛星パレネ (Pallene) に付随する環 R/2006 S 2 は、いずれも土星の周りを一周していますが、それに対して今回発見されたメトネとアンテに付随する環が弧状なのは、ミマスによる共鳴力の効果の違いによるものだと分析されています。

 注:衛星の番号はローマ数字で表すが、わかりやすいように括弧内に算用数字を示した。

参照:

2008年9月22日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)