NASAの火星着陸探査機、水を検出。その続報

 2008年8月1日から2日にかけて、NASA (アメリカ航空宇宙局) の火星着陸探査機フェニックス (Phoenix) が火星の土壌から水を検出したというニュースが大きく報道されました。火星はかつて、生命が存在しうる環境だったのか、また、有機物や生物が存在するのかという疑問にも答えるべく、調査が進んでいます。このニュースの続報が日本時間8月6日朝に発表されました。

 発表は、調査の中間報告という位置づけで行われました。水の検出以降、マスメディアや一般の市民がやや興奮気味で、インターネット上では、「有機化合物を発見したらしい」といった偽の情報も出回っており、状況の沈静化を図るべく、進行中の研究について報告することにした、いう背景があります。

 発表によるとフェニックス着陸探査機に搭載された装置のうちの一つ、MECA(Microscopy, Electrochemistry, and Conductivity Analyzer: 顕微鏡、電気化学、伝導率解析装置) が、取得された火星土壌から過塩素酸塩が出すシグナルを検出したそうです。ただし、まだ火星に過塩素酸塩があることが確認されたという段階ではなく、調査中であるということが強調されています。

 過塩素酸塩は1つの塩素原子と4つの酸素原子から成るイオンです。地球上では、チリのアタカマ砂漠のように非常に乾燥した場所にも存在しています。また、地球の微生物の中には過塩素酸塩を含んだプロセスによってエネルギーを得ているものもいます。ただ、仮に過塩素酸塩の存在が確認されたとしても、それが火星での有機物や生命に良いことなのか、悪いことなのかは、不明なままです。

 フェニックス着陸探査機は、5月下旬に火星に着陸して以降、搭載されている複数の装置を使って火星表面を調べ、火星に生命が存在できるかどうかを調査してきました。具体的には、氷が溶けて生物が存在するために十分な環境になるのかどうか、有機物や生命の素となる物質があるのかどうか、などの点を明らかにしようとしています。また、レーザー光を用いた火星大気のダストや雲の調査も進んでいます。さらには、着陸機周辺について360度のカラーパノラマ写真も撮影されています。

 もともとの計画では、8月下旬で探査を終える予定でした。しかし、水の検出という大きな成果と、探査機の状態がよいことから、火星探査は9月末まで延長されることになりました。

 今回の過塩素酸塩の検出やその他の研究成果の最終報告までには、もう少し時間がかかりそうです。6日に行われた会見では、研究者たちが慎重に、落ち着いて調査を進めることができるように、見守ってほしいとのコメントもありました。

参照:

2008年8月8日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)