国際天文学連合 (IAU) は、2005年3月31日に発見された太陽系外縁天体(136472) 2005 FY9 について、その発見者であるカリフォルニア工科大学のマイケル・ブラウン (Michael Brown) 博士によって提案されていた「マケマケ (Makemake)」という名称を承認し、同時に準惑星として分類することを決定しました。
マケマケは、南太平洋のラパ・ヌイ島 (イースター島) に伝わる、人間を創造し豊穣を約束する神の名前です。この天体の発見がキリスト教の復活祭(イースター) の数日後だったため、そして、この島をヨーロッパ人が発見したのが1722年の復活祭の日と言われているための提案でした。
これによって、マケマケは4つ目の準惑星、なおかつ、冥王星、エリスに次ぐ3つ目の冥王星型天体となりました。国際的には、他にもいくつかの準惑星候補があがっています。その大きさなどが明らかになるにつれ、マケマケと同様に、IAUで命名提案が承認されると同時に準惑星として登録されることになります。したがって、今後も準惑星の数が増えていく可能性は高いでしょう。
一方で、2006年のIAU総会で採択された太陽系の惑星の定義に反発し続けている天文学者もいます。特に冥王星の発見の地であるアメリカでは、その傾向が顕著です。
アメリカのボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学では、8月14日から3日間にわたって「The Great Planet Debate (偉大なる惑星討論会)」なる討論会が開催される予定です。
天文学の分野では、1920年に開催された宇宙構造についての有名な討論会を「The Great Debate」と呼んでいます。この時には、渦巻き星雲 (注) が我々の天の川銀河に属するのかどうかや、天の川銀河の大きさに関する討論が、二人の有名な天文学者の間で行われました。
今回は、それにちなんだ惑星定義についての討論会で、アメリカ自然史博物館で冥王星を展示から真っ先にはずしたニール・タイソン (Neil deGrasse Tyson)博士と、IAUの惑星の定義に反対しているマーク・サイクス (Mark Sykes) 博士との間での討論も予定されています。
とはいえ、全体としては、惑星の定義を改めて冷静に見直し、様々な側面で捉え直すと共に、教育現場で科学教育に生かそうという狙いがあります。特に、なんらかの決議や採決が予定されているわけではありませんが、この討論会の行方は今後のIAUの議論に反映される可能性もありえないことではありませんので、注目に値することは間違いないでしょう。
注:当時は、淡く星雲状に見える天体が、我々の銀河系の中にあるのか外にあるのかが明らかになっておらず、現在の系外銀河にあたる天体も、すべて「星雲」と呼ばれていました。
2008年8月4日 国立天文台・広報室