ALMA (アルマ) 計画の進捗状況 −現地での組み上げ調整、試験においてアンテナの性能を確認−

 日米欧が協力して南米チリのアンデス山中に建設を進めている「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (略称:ALMA、アルマ) 」において、日本側の推進母体である国立天文台は、現在、現地でのパラボラ・アンテナの組み上げ調整・試験を進めています。このたび、この1台に受信機を搭載し、月の電波画像の試験撮影に成功しました。これは、日米欧を通じ、現地で初めての撮影であり、アンテナの性能を確認する重要なマイルストーンを順調に達成したことになります。

 ALMA計画では、ミリ波サブミリ波における究極の電波望遠鏡の実現を目指して、直径12メートルのアンテナ64台とアタカマ・コンパクト・アレイ (ACA) アンテナと呼ばれる16台のアンテナの合計80台を干渉計方式で組み合わせ、ひとつの巨大な電波望遠鏡に匹敵する能力のアンテナ群を構成します。

 これらの装置のうち、日本はACAアンテナ (直径12メートルのアンテナ4台と直径7メートルのアンテナ12台で構成される高精度パラボラ・アンテナ群)、およびそのための相関器、ミリ波サブミリ波受信機の製作などを担当しています。ACAアンテナを含めた日本が担当するシステムは、ALMAで取得される電波画像の質を飛躍的に高める役割を果たします。

 2007年の後半には、日本が製作を担当するACAアンテナのうちの3台 (直径12メートル) が、チリ現地での組み立てを完了しました。最終的にはALMAの建設地である標高5000メートルのチャナントール高原に設置されますが、現在は、ALMA山麓施設 (標高2900メートル) の場所で、組み上げ調整・試験が行われています。

 このたび、このうちの1台に日本が製作を担当する受信機を搭載し、観測波長2ミリメートル (周波数140ギガヘルツ) で初めて月の電波画像の撮影を行いました。

この画像では、月面の温度分布を的確にとらえており、アンテナが目標性能を満たしていることが確認されました。可視光で撮影した月の画像では、太陽からの光が月面で反射したものを見ているのに対して、電波では、月面から深さ数十センチメートル付近までの岩石の熱による放射をとらえることが可能で、月の地下の温度が場所によって違うようすをきれいに描き出すことができます。

 ALMA計画は、日本では2004年度より8年計画として進められてきましたが、計画通り、開始から4年が経過するこの時期に、今回の撮影が成功したことにより、アンテナの性能を確認する重要なマイルストーンを順調に達成したことになります。

 ALMAのすべての装置が完成すると、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の10倍に相当する高い解像力を発揮することができます。2012年から予定される本格観測では、ミリ波サブミリ波の電波の特性をいかして、宇宙初期における銀河の誕生や惑星系の誕生、そして、宇宙の物質進化に関しての重要な知見が得られることが期待されます。

参照:

2008年3月18日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)