山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、3月4日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.1等の超新星を発見しました。この超新星は、りょうけん座方向にある NGC 4490 銀河の中にあり、板垣さんご自身が所有する口径60センチメートルの反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測により撮影された多数の画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、板垣さんは独立発見者の一人となりました。また、この超新星は「2008ax」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級 (位置と等級は板垣さんが画像から測定した値) は次の通り。
発見日時 2008年3月4.62日 = 3月4日14時53分 (世界時) 赤経 12時 30分 40.84秒 赤緯 +41度 38分 15.4秒 (2000年分点) 発見等級 16.1等
なおこの超新星は、3月3.45日と4.39日に米国グループにより撮影されており、このグループによる発見として先に報じられていましたが、今回の板垣さんによる発見も独立発見として認められました。
この超新星は NGC 4490 銀河の中心から、東に53秒角、南に24秒角離れた位置にあります。板垣さんは、最近では2007年2月27日にもこの場所を撮影していましたが、そのときの画像 (限界等級は19.0等) にはこの天体は写っていませんでした。また、DSS (注) にも写っていませんでした。さらに、英国のR.Arbour さんは、米国グループの発見よりもわずか約6時間前にあたる3月3.19日に40センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を使ってこの場所を観測していましたが (限界等級は18.5等)、この天体は写っていませんでした。
板垣さんによる超新星発見は、今年に入ってからこれで3個目となりました。また、今年に入ってから日本人が発見した超新星の数も5個となり、驚異的な発見ペースとなっています。今回の超新星発見を含め、板垣さんの超新星の発見数は通算37個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
2008年3月7日 国立天文台・広報室