神戸大学の Patryk Sofia Lykawka (パトリック・ソフィア・リカフィカ) 研究員と向井正 (むかいただし) 教授は、太陽系外縁部の理論的な研究から、地球の0.3ないし0.7倍程度の質量を持つ未知の惑星クラスの天体が存在している可能性が高いことを見いだしました。今後、大規模サーベイ観測が開始されると、この天体は10年を待たずに発見される可能性があるとしています。
太陽系外縁天体は、1992年に初めて発見されて以来、1000個以上見つかっています。それらの天体の軌道分布が明らかになるにつれて、その特徴が目立ってきました。例えば、通常の惑星形成理論から予想されるよりも、離心率や軌道面の傾斜角が大きい天体が多いことが挙げられます。また、飛び抜けて大きな軌道上を運動する (軌道長半径が大きい) ような外縁天体の存在も知られています。
これまで、こういった特徴を説明するための様々なモデルが提案されてきましたが、観測された天体の軌道分布の特徴のすべてを矛盾なく再現できたものはありませんでした。
Lykawka 研究員と向井教授は、これら太陽系外縁天体の特徴をすべて矛盾なく説明するには、未知の惑星クラスの天体が存在すると考えるのが最も自然であるとして、シミュレーションを行いました。その結果、通常の外縁天体が存在する範囲よりも遠方に飛ばされた (天王星や海王星などの大きな惑星の重力によって散乱された) 惑星クラスの天体が存在する可能性が高いことを見いだしました。
予想される未知の天体の軌道は、近日点距離が80天文単位 (1天文単位とは地球と太陽の平均距離で、約1億5千万キロメートル) 以上、軌道長半径は100-175天文単位、軌道面の傾斜角は20-40度と考えられます。また、質量は地球の0.3-0.7倍程度と考えられます。この惑星が近日点付近にあるとすると、その明るさは14.8-17.3等級と考えられ、現在計画されている大規模サーベイ観測が始まれば、やがてこの天体が発見される可能性があります。また、この大きさであれば、現在の太陽系の惑星の定義でも、発見後、新しく「惑星」に分類される可能性は高いと考えられます。
この研究成果は、4月発行の米国の天文学専門誌「アストロノミカル・ジャーナル」に掲載されます。
2008年3月2日 国立天文台・広報室