岡山天体物理観測所、巨星のまわりの褐色矮星を発見

 東京工業大学、国立天文台、神戸大学、東海大学などの研究グループは、中国国家天文台のグループとの共同観測により、かみのけ座11番星と呼ばれる巨星のまわりに木星の約19倍の質量をもつ褐色矮星を発見しました。これは、巨星のまわりで見つかった3例目の褐色矮星です。

 研究グループは、2001年から、国立天文台岡山天体物理観測所の口径188センチメートル望遠鏡を用いて、約300個の巨星を対象にした太陽系外惑星の探索を続けています。2005年からは、中国国家天文台の研究者と協力してさらに規模を拡大し、中国興隆 (シンロン) 観測所の口径2.16メートル望遠鏡を用いて、新たに約100個の巨星を対象にした系外惑星探索を開始しました。

 今回の発見は、日中共同の系外惑星探索の最初の成果となります。

 かみのけ座11番星は、地球から約360光年の距離にあり、太陽の約20倍の直径と約3倍の質量をもつ巨星です。

 2004年、まず岡山天体物理観測所で行った観測によって、この星が大きな速度変化 (ふらつき) を示すことが明らかになりました。その後、興隆観測所でも追跡観測が行われ、この速度変化の周期が約326日、振幅が毎秒約300メートルであることを突き止めました。これは、中心星であるかみのけ座11番星から約1.3天文単位の距離を、木星の約19倍の質量をもつ褐色矮星が周期約326日で公転していて、その引力を受けた中心星がふらついていることを示しています。

 現在までに、約250個の系外惑星が発見されていますが、そのほとんどは今回と同様、惑星の引力による中心星のふらつきをとらえる観測手法によって見つかったものです。この手法では、引力が強く中心星を速く揺らす (速度変化が大きい) ことができる重い惑星ほど、簡単に発見することができます。

 ところが、実際にこれまで発見されている系外惑星の質量分布を調べると、むしろ軽い惑星ほどたくさん見つかっており、本来発見されやすいはずの恒星と惑星の中間の質量 (木星の約13ないし80倍) をもつ褐色矮星の発見確率は、惑星に比べて10分の1程度以下と極めて低いことがわかっています。このような状況は“褐色矮星砂漠”と呼ばれています。

 褐色矮星砂漠の存在は、ガス雲の重力収縮によって誕生する恒星と、原始惑星系円盤の中で誕生する惑星との形成過程の違いを反映していると考えられ、惑星形成のメカニズムを探る上で重要な手がかりとなります。しかし、太陽質量程度の恒星のまわりに褐色矮星砂漠が存在することはよく知られているものの、今回のかみのけ座11番星のような太陽より重い恒星のまわりに褐色矮星砂漠が存在するかどうかは、まだ明らかになっていません。

 近年、本研究グループをはじめとする巨星の惑星探索グループの活躍によって、重い恒星のまわりでも惑星や褐色矮星が発見されるようになってきました。今回の発見もその貴重な一例です。

 研究グループは、すばる望遠鏡を用いたり、韓国の天文台の研究者などとも協力したりしながら、惑星探索の規模をさらに広げています。今後は、これらの観測によって重い恒星のまわりの惑星や褐色矮星の存在確率を明らかにし、その形成過程を解明しようと考えています。

 この研究成果は、米国の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」1月1日号に掲載されました。

※この記事は、東京工業大学の佐藤文衛さんよりご提供いただきました。

参照:

2008年1月10日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)