北海道札幌市の金田宏 (かねだひろし) さんは、12月25日 (世界時、以下同じ) の観測から、こぎつね座に8.7等の新星を発見しました。この新星は、デジタルカメラ (焦点距離105ミリメートル、f/2.5 レンズ使用) により撮影された3枚の画像の中から発見されました。この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告されました。
DSS (注) を用いて、半径20秒角以内の範囲で調べた結果、この天体はありませんでした。また、金田さんは同じ場所を10月に3夜、11月に4夜、今月も2夜 (限界等級はいずれも10ないし11等) 観測していますが、いずれもこの天体は写っていませんでした。
岡山県津山市の多胡昭彦 (たごあきひこ) さんも、12月26日にデジタルカメラ (焦点距離105ミリメートル、f/3.2 レンズ使用) で撮影した2枚の画像に8.3等で写っているこの天体を独立発見しています。
なお、金田さんが発見時に撮影したほかの画像には、この天体が8.2等に写っているものもありましたが、薄雲を通して観測していたために本当の明るさは定かではありません。
山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、12月26日に撮影した画像にこの天体が7.1等で写っているのを確認しているほか、天体の位置も確認しています。
この天体の発見日時、位置 (板垣さんによる観測値) は次の通り。
発見日時 2007年12月25.35日 = 12月25日8時24分 (世界時) 赤経 19時 48分 08.84秒 赤緯 +21度 15分 27.6秒 (2000年分点)
この新星は、12月26日に、美星天文台 (岡山県井原市)、県立ぐんま天文台(群馬県高山村)、兵庫県立西はりま天文台公園 (兵庫県佐用町)、それに岡山県倉敷市の藤井貢 (ふじいみつぐ) さんによって分光観測が行われており、その結果、スペクトル線に現れる吸収線の特徴から、明るさが極大時に達する前の古典的新星ではないかと考えられます。
新星や超新星の発見の多くは明るさが極大に達した後のため、今回のように極大前に発見された新星の場合は、観測から貴重な情報が得られます。引き続き、追跡観測が強く望まれます。
この新星は、「こぎつね座 V459」と命名されました。
注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
2007年12月28日 国立天文台・広報室