2007年12月14、15日の夜、ふたご座流星群の流星体によるとみられる月面衝突閃光の検出に、日本の観測者らが成功しました。しし座流星群、ペルセウス座流星群に伴う閃光については、多地点からの同時観測によって、その存在がすでに確実になっていますが、ふたご座流星群については1地点からの観測は報告されているものの、信頼性の高い多地点同時観測は今回が世界で初めてとなります。
これらの観測は、電気通信大学の柳澤正久 (やなぎさわまさひさ) 教授が中心となって、鹿児島県薩摩川内市のせんだい宇宙館などを通じて呼びかけられました。これに応じた東京都練馬区在住のアマチュア天文家、唐崎秀芳 (からさきひでよし) さんと、滋賀県守山市在住のアマチュア天文家、石田正行 (いしだまさゆき) さん、電気通信大学の池上裕美 (いけがみひろみ) さん、石榑勇介 (いしぐれゆうすけ) さんらの観測によって、月面衝突閃光によるとみられる4例の発光が捉えられたのです。このうち3件は滋賀県と東京都の2地点から同時に同じ位置に観測されており、月面での現象であることは間違いないと考えられます。また、神戸大学の阿部新助 (あべしんすけ) 助教は、兵庫県立西はりま天文台公園でカラービデオカメラを用いた観測を行い、これら3つの閃光を確認しました。カラー観測の成功はおそらく世界初であり、詳しい解析結果が待たれます。
念のために、これらの現象の時刻と月面上での位置 (注) を以下に記します。他にも、神戸大学の高橋隼 (たかはしじゅん) さんの呼びかけに応じた兵庫県内の高校生チームをはじめとして、多くのグループが観測に参加しており、解析が進めば閃光の数は更に増える可能性があります。
なお、閃光2、3、4は東京都と滋賀県からの同時観測ですが、閃光1は現在のところ1地点のみの観測のため月面閃光とは確認されておらず、現在、同時観測を調査中です。
月面衝突閃光は、大きな流星体 (約0.1キログラム以上) が月面の夜側に高速度 (ふたご座流星群の流星体では、秒速33キロメートル) で衝突したときに生じる高温ガスおよびプラズマが発する閃光です。特に流星群活動期に月面に観測される閃光は、この月面衝突閃光であろうと考えられています。しかし、多地点同時観測により、ノイズや地球大気中での現象あるいは人工衛星ではなく月面で起きた閃光であることが確実になっても、それが衝突による閃光であることが立証されているわけではありません。月面での放電など他の原因もあり得るからです。今回の閃光の特徴の一つは、閃光1を除き、どれも明るいことです。かなり大きな流星体 (サッカーボール程度) が衝突した可能性があり、衝突によってクレーターができたかもしれません。このようなクレーターが日本の月周回衛星「かぐや」で検出される可能性もあり、期待が高まっています。
注:地球から見た平均の月面中央点が緯度・経度共に0度となる月面上の緯度・経度で示す。ただし、示した値には2度程度の誤差が見込まれる。
なお、月面上での東西は地球から見た天球上での東西とは反対になることに注意が必要である。
※この記事は、電気通信大学の柳澤正久さんよりご提供いただきました。
2007年12月25日 国立天文台・広報室