イタリアのトリノ天文台、米国のミシガン州立大学、日本の東北大学、オーストラリアのオーストラリア国立大学などからなる国際研究チームは、銀河系のハローにある古い年齢の恒星系が2層構造をしていることを明らかにしました。
銀河系のハローには、100億歳を越えるような古い年齢の恒星が、年齢の若い銀河系の円盤成分を囲むように広く分布しています。これらの恒星はハロー星と呼ばれ、円盤部分にある恒星とは異なる元素組成と空間運動を持ち、銀河系の形成と進化過程に対してたいへん重要な情報を提供するものと考えられています。
これまで、このハローは単一の構造成分だけから成っていると考えられてきました。ところが、本研究チームが、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(通称:SDSS) (注1) と呼ばれる国際プロジェクトによって観測された2万個以上のハロー星のデータを解析したところ、銀河系のハローが、2つの広範に重複している構造成分 (内側のハローと外側のハロー) に明確に分かれ、それぞれ異なる空間密度分布、星の軌道、それに星の金属 (注2) 含有率を示すことが明らかになりました。
内側のハローは回転楕円型をしていて、長軸半径は5万光年から7万光年ほどの長さ、短軸半径は3万光年から5万光年ほどの長さで、銀河系円盤と同じ方向にゆっくりと平均的に回転しています。一方、それよりも外側にあるハローの星は、ならしてみると、銀河系の円盤とは逆方向に回転しており、さらに内側のハローよりも金属含有率が低いことがわかりました。
これらの特性は、それぞれのハローの成分が基本的に異なった方法で形成されたことを反映していると考えられます。特に、回転方向が違うハロー成分を同じ物理機構で形成することは困難です。一般に、銀河系は、小さく原始的な銀河の塊のいくつかが合体したり潮汐力で破壊されたりしながらできあがったと考えられています。今回の解析から、ハローの外側と内側ではその形成過程に大きな違いがあったものと示唆され、銀河系の形成を知る上で重要な鍵を与えるものと考えられます。
この研究成果は、英国の科学雑誌「ネイチャー」2007年12月13日号に発表されました。
注1:スローン・デジタル・スカイ・サーベイ (Sloan Digital Sky Survey)は、米国ニューメキシコにあるアパッチポイント天文台の2.5メートル望遠鏡と広視野カメラを使用して、全天サーベイ観測を行うプロジェクト。
注2:ヘリウムよりも重い元素を指す。
※この記事は、東北大学の千葉柾司さんよりご提供いただきました。
2007年12月25日 国立天文台・広報室