11月3日、4日に兵庫県立西はりま天文台公園でSETI (地球外知的生命探査)に関する研究会が開催されました。全国から66名の天文、生物、技術関係者らが集まり研究発表、観測実習、討論会などが行われました。これだけの規模のSETIに関する研究会が開催されたのは国内では初めてのことです。
SETIは、地球外の文明が放射している電磁波の検出を目的とした一連の研究のことです。1960年にアメリカの Frank Drake 氏が国立電波天文台で実施したのが最初で、その後アメリカを中心に観測が継続されています。
日本国内では、1991年の寿岳潤 (じゅがくじゅん) 氏 (東海大学:当時) と野口邦男 (のぐちくにお) 氏 (名古屋大学:当時) により、宇宙科学研究所(当時) の口径1.3メートル赤外線望遠鏡を用いたダイソン球とよばれる高度文明による建造物の探査が行われました。その後、九州東海大学の藤下光身 (ふじしたみつみ) 氏が率いる研究チームが1999年に名古屋大学太陽地球環境研究所の電波望遠鏡を、また、2005年には国立天文台水沢観測所 (現在の水沢VERA観測所) の10メートル電波望遠鏡を用いた観測を行いました。さらに、兵庫県立西はりま天文台公園では、2005年から口径2メートルのなゆた望遠鏡による観測を実施しており、現在も継続中です。これは現在の地球人類レベルの文明が、地球にレーザを放射していると仮定し、そのレーザを分光学的に検出しようという試みです。
今回の研究会では国内の観測所で地球外文明からの兆候を検出した場合に、どのように対応するべきかという討論が行われました。このようなテーマでの会議は世界で初めてのことです。
地球外文明からと思われる信号を検出した場合に発見者などがとるべき対応については、1991年にIAU (国際天文学連合) の総会で指針が決議されています。それによると、「発見者は適切な国家の当局に通報すべきである」との一文がありますが、それが具体的にどこの機関に相当するのか明確にされている国はありません。
そこで、今回の研究会では、日本の場合はどこに通報すべきかについて特に討論を行いました。ところが、出席者からは、具体的な機関の候補が挙がることは殆どなく、「地球外文明についての情報が一国家に独占されたり、隠蔽されたりする危険性があるので、政府機関への連絡はやめた方がよい」などの意見が多く出されました。また、「IAUの指針が決議された頃は、インターネットの普及が予測できていなかったので、今の時代にふさわしいものを作り直すべきだ」という声も揚がりました。
これらの意見をふまえて、「国家当局」の文言の解釈と共に、地球外文明からの兆候を検出した場合の適切な対応策を考えるワーキンググループが、今回の研究会の出席者を中心に発足しました。今後は、必要に応じて新たな指針の草案を作成し、国際的な関連組織へ提案することも視野に入れた活動を目指します。
※この記事は、兵庫県立西はりま天文台公園の鳴沢真也さんよりご提供いただきました。
2007年11月27日 国立天文台・広報室